研究課題/領域番号 |
24591612
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
桑形 麻樹子 昭和大学, 医学部, 客員教授 (70398684)
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研究分担者 |
柴藤 淳子 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (10611121)
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
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キーワード | DOHaD / 新生児期栄養環境変化 / マウス / 遺伝子解析 / 自然免疫 |
研究概要 |
これまでに我々は胎生期に栄養環境を変化させ、妊娠末期の母体および胎児の遺伝子解析を実施し、栄養環境により疾病発症に関係する遺伝子の選抜を行ってきた。本プロジェクトでは生後の栄養環境を変化させて出生児の遺伝子解析を実施し、胎児期の遺伝子解析結 果と併せて発達障害や成人期疾患発生機序に関与する遺伝子の選抜を試みている。 平成25年度は新生児期に栄養環境を変化させた生後1週および3週の出生児の肝臓のオミクス解析を行うとともに、肝臓、脾臓および胸腺の病理組織学的検索を行った。50%給餌制限(FR群)を生後一週間受けた出生児では、生後1週の解析では免疫系に関連する遺伝子発現があがっていた(NFkB, Cd40, IL1β)。また、マクロファージ賦活化を示すケモカインシグナル発現もあがっており、自然免疫系が優位になっている遺伝子変動がみられた。生後3週の解析では、体重はキャッチアップしているにもかかわらず、コレステロール合成系の遺伝子群(Mvk,Pcsk9, Insig1 など13種)、脂肪合成/代謝に関与する遺伝子発現(scd1)の低下など肥満を示唆する遺伝子発現は低下していた。一方、60%高脂肪食を哺育期間3週間摂取(HF群)した出生児の生後1週の解析では、脂肪合成/代謝に関与する遺伝子(scd1)、自然免疫に関与する遺伝子(IL1β,)の発現があがっていた。生後3週では、マクロファージ賦活化を示すケモカインシグナル発現、脂肪蓄積を反映する遺伝子(Rxra)、動脈硬化に関与する遺伝子(Vwf)の発現が上がっていた。 形態学的観察では、肝臓、脾臓での髄外造血に新生児期の栄養環境が影響を及ぼすこと、胸腺、腎臓にも形態学的な変化(発達遅延、尿細管形成異常)が観察された。本年度の結果から、新生児期の栄養環境が免疫系および腎臓の発達に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生後1週および3週の遺伝子解析の操作は終了し、現在、これらの結果の解析を行うとともに、必要に応じてRT-PCRにて発現の確認を行っている。また、形態学的観察も主要臓器の標本作製中であり、計画どおりに進んでいる。同プロトコールにて再度動物実験を実施し、体重推移の再現性も確認した。
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今後の研究の推進方策 |
胎生期の低栄養環境により変動した遺伝子群と本実験での遺伝子群の変動を比較し、DOHaD説に基づいた発達期の栄養環境により疾病発症に関係する遺伝子の選抜を行う。また、新生児期栄養環境に変化により自然免疫系が優位に動くことが明らかになったことから、脾臓および胸腺についても免疫組織学的解析を行い、生体への影響を検索していく予定である。 本実験プロトコールではFR群の生後1週および生後3週との比較により体重のキャッチアップによる影響も検討できることが考えられたことから、多方面から得られた結果を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
毎年、海外の学会に参加発表する予定とし予算をたてたが、実験の進行状況および日程から参加ができなかったことに起因する。 実験の成果が得られてきたことから、今年度は複数の海外学会へ参加発表することを予定している。また、追加して実施する遺伝子解析費に充填する。
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