発達期の肺胞微小循環障害の解明には、血管内皮細胞をマーカーとする免疫組織染色だけでは実際の細胞レベルにおける血管内皮細胞の異常を捉えることはできない。そこで電子顕微鏡を用いた超微形態の評価解析を行った。 ICRマウスを生直後より85%酸素(O2)またはルームエア(Air)下に14日間暴露させた後、回復期としてAir下にさらに7日間飼育した。Air2群(Air-14d、21d)、高濃度酸素14日群(O2-14d)、高濃度酸素回復群(O2-Air-21d)の計4群の肺組織を用いて、各群の肺胞毛細血管における血液空気関門(BAB)の厚さ、BABにおける血管内皮細胞(EC)の厚さ、上皮細胞の厚さを計測した。毛細血管を構成するECの細胞質成分の厚さを5か所計測した平均値、またその計測値の標準偏差(SD)を計算し、各群で比較検討した。SD高値はEC形態が不均一で毛細血管腔が狭小化していることを示唆する。また肺高血圧の評価のために右室心筋重量/心室中隔+左室心筋重量(RV/IVS+LV)を計算し各群で比較検討した。 RV/IVS+LV値は各群で有意差はなかった。しかしO2-14dの毛細血管を構築するECは、Air-14d、-21dと比較して不均一に肥厚した細胞質を有し、血管内腔は狭小化していた。BABは著明に肥厚しており、中でもBAB中のEC成分の占める割合が増加していた。O2-Air-21dでは、O2-14d と比較してBABおよびECの肥厚は改善していたが、EC全体では不均一に肥厚した細胞質を有するためSDは高値であり血管内腔は虚脱していた。 BABの肥厚は、ガス交換障害による低酸素血症および高炭酸ガス血症を引き起こし、肺血管の異常血管収縮を来す可能性がある。また毛細血管の虚脱は、本来抵抗血管ではない肺胞微小循環レベルで肺循環障害を来す可能性がある。これら変化は、CLDに続発する肺高血圧発症機序に関与している可能性があり、この血管内皮細胞障害を正常化させる治療戦略が今後の検討課題である。
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