• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

胎児の栄養環境と代謝エピジェネティクス制御

研究課題

研究課題/領域番号 24591614
研究機関関西医科大学

研究代表者

高屋 淳二  関西医科大学, 医学部, 講師 (80247923)

キーワードエピジェネティクス / カルシウム / ラット / グルココルチコイド
研究概要

【目的】「母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、仔が成獣となった段階でメタボリックシンドローム発症の一因になる」私共の実験結果をもとに、出産した母獣と授乳した母獣のCa欠乏が、仔の将来のインスリン抵抗性におよぼす影響について検討した。
【方法】1)12週齢のWistar雌ラットを2群に分け、正常飼料(C)とCa欠乏飼料(D)で飼育し、正常飼料雄ラットを交配させ、出生した仔を4群に分け、21生日まで保育させた;DD, DC, CC, CD (はじめの文字が生んだ母獣、2番目の文字が哺乳の母獣)。離乳期からは正常飼料を与え、生後200日に、体重、血圧、脈拍を測定後、断頭で採血し肝臓を摘出した。肝臓からmRNAを抽出し、11β-HSD1のmRNA特異的プライマー対を用いてリアルタイムPCRを行った。分離凍結した血清で、後日アディポサイトカインとインスリン抵抗性の指標となる血液マーカーを測定した。
【結果】1)出生時および生後21日の体重に各群で差は認めなかった。2)生後200日における4群の血圧、心拍数、血糖に有意差はなかったが、雌雄ともDCの体重は有意に重かった。3)低Ca母獣からの仔(DDとDC)は雄のみ、血清インスリンが高値で、HOMA-IRは有意に高かった。4)雄DDは11β-HSD1のmRNA発現は低かった。
【結論】低Ca母獣からの雄仔は、インスリン抵抗性を獲得している。また生んだ母獣と異なるCa栄養状態の里親に授乳保育された仔は、出生と授乳が同じCa栄養状態の母獣に養育された仔に比べて、11β-HSD1の発現が亢進した。以上より、母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、胎児期に設定されたプログラムにミスマッチした母獣に授乳保育されることは、成獣の段階でメタボリックシンドローム発症の一因になると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低カルシウム栄養の母獣から出生した仔を、正常母獣を里親として生育する実験系を確立できた。本年度の実験により、たとえ胎児期にDNAのメチル化が変化しても、出生直後の環境により修正が可能かどうかを明らかにした。「胎児期に不足したカチオンを補充ないしは正常母獣に育てられることにより、将来のインスリン抵抗性がリセットされる」ことを明らかにした。

今後の研究の推進方策

今後は、エピゲノムの変化と表現型に性差が観察されたが、その原因についてさらに検討する。
また次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化が継代し、この表現型が引き継がれることを明らかにする。
低栄養の母獣から出生した仔を、正常母獣を里親として生育し、オリジナルの母親に育てられた仔と里親に育てられた仔のメチル化を比較する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] A calcium-deficient diet in rat dams during gestation and nursing affects hepatic 11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1 expression in the offspring2014

    • 著者名/発表者名
      Takaya J, Yamanouchi S, Kaneko K
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e84125

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0084125

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A calcium-deficient diet in pregnant, nursing rats induces hypomethylation of specific cytosines in the 11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1 promoter in pup liver2013

    • 著者名/発表者名
      Takaya J, Iharada A, Okihana H, Kaneko K
    • 雑誌名

      Nutr Res

      巻: 11 ページ: 961-970

    • DOI

      10.1016/j.nutres.2013.07.015.

    • 査読あり
  • [学会発表] ミスマッチ里親の授乳保育がインスリン抵抗性を決定する;カルシウム欠乏母獣の仔ラットモデルによる検討2013

    • 著者名/発表者名
      高屋淳二
    • 学会等名
      第17回 小児分子内分泌研究会
    • 発表場所
      札幌( 北広島クラッセホテル )
    • 年月日
      20130706-20130707
  • [学会発表] A calcium-deficient diet in pregnant, nursing rats affects the methylation of specific cytosines in the 11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1 promoter within pup liver

    • 著者名/発表者名
      Junji Takaya, Anna Iharada, Kazunari Kaneko
    • 学会等名
      第95回 米国内分泌学会学術会議(ENDO2012)
    • 発表場所
      米国・サンフランシスコ
  • [学会発表] ミスマッチ里親の授乳保育がインスリン抵抗性を決定する;カルシウム欠乏母獣の仔ラットモデルによる検討

    • 著者名/発表者名
      高屋淳二、山内壮作、田邊裕子、金子一成
    • 学会等名
      第47回 日本小児内分泌学会学術集会
    • 発表場所
      東京( 浅草ビューホテル )

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi