研究課題/領域番号 |
24591615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
出口 貴美子 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (50227542)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 虚血性脳障害 / 神経幹細胞 / マウスモデル / 治療法開発 / 超早産児 |
研究概要 |
1. マウスモデルの構築 ヒトの超早産児における虚血性脳障害剖検脳に認められた神経幹細胞の障害、神経細胞の移動の障害、大脳皮質の層構造の異常、異所性神経細胞のなどの所見を動物で再現するために、モデルマウスを構築し、病理学的検討を行った。モデルマウスの作成方法は、ICRマウス妊娠母体(E17.0を基準とする)用い、麻酔下に開腹し、子宮動脈を一定時間結紮後再灌流し、胎児の一次的な循環障害による脳虚血を誘導した。モデルマウスの評価として、閉腹後、数日までの一定時間に胎児を採取し、虚血性の変化や細胞死の有無を確認した。虚血下の神経細胞の分化および移動の状況を観察するために、子宮内エレクトロポレーションを行い、脳室壁に存在する神経幹細胞にGFP発現プラスミドを導入し、特定の細胞群を緑色にマークし、経過を追った。 2. 組織学的解析による形態的な病態解明 虚血負荷後、様々な時点で脳を採取し、凍結切片を作製して組織学的な解析を行った。虚血負荷後早期(24時間後)での解析では、Caspase3陽性細胞が出現し、ヨウ化プロピジウム(PI)核染色により一定領域の細胞死が確認されたため、虚血による組織変化を誘導できたことを確認した。虚血負荷後3日(出生直後)では、虚血群において、GFP陽性神経細胞が正常コントロール群に比べ遅れ、一部、脳質周囲に停滞し、皮質への移動も均一ではなかったことにより、移動の異常が確認された。出生後一定期間(1ヶ月)後の解析では、大脳皮質の層構造の異常、皮質のグリオーシスの有無、白質内の異所性神経細胞が認められた。その原因の一因としてNestin 陽性のradial gliaの不整が認められ、神経細胞の移動が妨げられいることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.モデルマウスの構築 子宮動脈の結紮時間や母体の体温調整などの条件調整により、虚血性の変化や細胞死の有無を確認され、胎児の虚血モデルとして適当であると考えられた。 2.組織学的解析による形態的な病態解明 虚血によってNestin陽性のRadial Gliaが障害されることにより、神経細胞の移動が次いで障害されている可能性が示唆され、病態解明に近づけた。
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今後の研究の推進方策 |
行動学的解析による認知や行動に関する解析 ヒトの超早産児では、虚血性脳障害と自閉症や学習障害、知的障害などの認知機能の障害との関連性が臨床的に示唆されている。我々が構築したマウスモデルを用い、組織学的解析で見いだされた脳の形態的な異常が、マウスの行動に影響を及ぼすのかどうかについて、行動学的解析により検証する。解析は生後4週齢より開始する。対照にはsham手術の個体を用いる。行動解析は、 オープンフィールド、ロタロッドなどにより、基本的な運動機能や情動に関する評価を行う。認められる表現型により、他のバッテリーを考慮していくが、他に受動的回避行動テストによる学習機能の評価、ソーシャルインタラクションテストによる社会性の評価などを行うことにより、このマウスが組織学的なモデルであるばかりでなく、行動学的な表現型に関しても認知学習機能の障害モデルと成り得る可か、検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行なった結果であり、翌年度の消耗品等の購入に充てる予定である。 主要な使用用途は、マウスモデルの作成のためのマウス購入と維持、虚血モデル作成のための外科的手術消耗品器具、組織学的解析のための抗体などの免疫染色等の消耗品で、概算で141万円の支出を予定している。また、関連分野の研究者からの情報収集、ならびに研究成果の発表のために、研究代表者の国内(小児神経学会および日本小児科学会)および国外(欧州神経学会)学会参加のための旅費および参加費の使用を予定しており、これらは各15万円と35万円の予定である。人件費の支出は、研究補助のため謝金で10万円の支出を予定している。備品購入の予定はない。
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