研究課題/領域番号 |
24591615
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
出口 貴美子 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (50227542)
|
キーワード | 虚血性脳障害 / 神経幹細胞 / モデルマウス / 超早産児 / 発達障害 / 治療法開発 |
研究概要 |
超早産児の後遺症として、発達障害(認知行動障害)が近年注目されている。我々は、これまでヒト超早産児の剖検脳や独自に構築した超早産児の脳虚血傷害モデルマウスを用いて、神経病理学的な解析を進めてきた。 モデルマウスの構築として、昨年構築に成功したモデルマウスの条件検討を行った。子宮動脈の結紮時間(虚血時間)を16分とし、酔科での手術時間中の温度管理を行なったところ、脳虚血障害の再現性を高めることができた。 組織学的解析による形態的な病因解明として、虚血後24時間の脳組織にて、脳室周囲にあるnestin陽性のRadialGlia の傷害が認められ、こられの結果より、RadialGlia の細胞傷害により、神経細胞の移動が妨げられ、その後の層構造の異常に繋がる可能性が示唆された。 行動学的解析による認知や行動に関する解析として、マウスモデルを用い、組織学的解析で見いだされた脳の形態的な異常が、マウスの行動に影響を及ぼすのかどうかについて、行動学的解析により検証した。解析は生後4週齢ごろで、人の学童期に相当する時期を選んだ。オープンフィールド、ロタロッドなどにより、基本的な運動機能や情動に関する評価を行った。他に受動的回避行動テストによる学習機能の評価、ソーシャルインタラクションテストによる社会性の評価などを行い、行動学的な表現型に関しても認知学習機能の障害モデルと成り得るか検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.モデルマウスの構築 モデルマウスの条件検討を子宮動脈の結紮時間(虚血時間)を16分とし、酔科での手術時間中の温度管理を行なったところ、脳虚血障害の再現性を高めることができた。 2.組織学的解析による形態的な病因解明 RadialGlia の細胞傷害による神経細胞の移動に関し、エビデンスを深めた。 3.行動学的解析による認知や行動に関する解析 生存マウスの記憶や認知などに関する行動異常が一部明らかとなった
|
今後の研究の推進方策 |
モデルマウスの条件検討や組織学的解析による形態的な病因解明に関し、今後も検討を重ねる。また、今年度は、我々が構築したマウスモデルを用い、治療法の開発を試みる。 1.低体温療法 現在、満期産の低酸素性虚血性脳症の治療法として、低体温療法が臨床の現場で用いられいる。しかし現在まで、低出生体重児に対しては行なわれていない。今回、モデルマウスの術中の低体温管理を行い、細胞障害性が軽減されるかどうか組織学的解析を行なう。 また、低体温管理下で生存したマウスを用いて、学童期と一致する時期の行動解析を行い、記憶や認知などに関する行動異常が改善されるかどうか検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、また人件費やその他経費を支出することなく本来の計画を進めることができた結果である。 マウスモデル作成のためのマウス購入を行うが、その際にこれまでのクローズドコロニーの系統であるICRマウスでなく、形質の均一化を図るために、純系マウスの使用もあわせて行う予定であり、そのためマウス購入費用が増加する。その他、手術器具、抗体などの免疫染色用の消耗品の購入を計画している。英文校正費用や雑誌投稿料等、その他の経費として30万円程度の支出を予定している。
|