これまでの本研究において、超早産児における虚血性脳障害のモデルマウス作成に際し、結紮時間や方法、手術方法を改良することによって、母マウスの死亡率が減少し、仔マウスを安定的に得て解析を行うことが可能になった。そこで本年度は、作成したモデルマウスについて、引き続き脳の詳細な組織学的な解析や行動学的解析を行った。 脳の組織学的な解析の際には、神経細胞移動の遅れの結果としてもたらされる、脳の組織構築の微細な変化に注目した解析を行った。正常対照において移動が終了する状態においても虚血が誘導されたマウスではまだ移動中の神経細胞を数多く認めることを確認したのち、それらの移動神経細胞の最終的な配置位置についての解析を行った。これらの神経細胞は最終的には脳表面近くに移動する細胞が多数を占めたものの、最終的な神経細胞が配置される位置には変化を認め、微細な組織構築変化が生じることが確認された。 行動解析としては、超早産児における虚血性脳障害の後遺症として、認知機能障害が注目されているため、認知機能の評価に焦点を当てて解析を行った。新規物体認識試験と、Y字迷路試験において正常対照マウスと比較した際に有意な低下をみとめ、認識記憶の障害および、作業記憶の障害が示唆された。
|