研究課題/領域番号 |
24591616
|
研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
中村 浩幸 独立行政法人国立成育医療研究センター, 母児感染研究部, 室長 (70256866)
|
キーワード | 母子感染症 / 先天感染症 / サイトメガロウイルス / 神経障害 / 人工多能性幹細胞 / アポトーシス |
研究概要 |
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症では、神経障害を含めて多くの臓器障害が発生することを特徴とする。当該疾患における、CMVによる臓器障害発生機序の解明は、当該疾患を克服する上で重要なステップである。CMVがどのようなメカニズムで機能障害を引き起こすのかについては不明な点が多い。昨年度の研究によって、CMVがiPS細胞由来神経幹・前駆細胞に感染し、アポトーシスを誘導することを明らかにしたが、本年度の研究によって、カスパーゼの活性化に加えて、ミトコンドリア機能障害、小胞体ストレス応答などがCMVによる細胞機能障害に関与している可能性を示唆するデータが得られた。さらに、CMV感染神経幹・前駆細胞モデルにおいて、CMV感染によって細胞遺伝子の発現変化について検討した結果、神経系細胞の分化や増殖に関連する細胞遺伝子の中で発現変動している遺伝子が存在することが明らかとなった。現在、そのような遺伝子の発現変動の性状について解析を行うとともに、CMV感染による神経系細胞障害機構にそれらの細胞遺伝子発現変化がとのように関わっているのかについて解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) ヒトiPS細胞から神経幹・前駆細胞を作製する培養系は確立しているが、神経幹・前駆細胞からニューロンあるいはグリア細胞に分化誘導する培養系の確立が不十分である。 (2) (1)の結果、CMV感染モデルとして、神経幹・前駆細胞を用いたモデルは確立した。しかし、CMV感染ニューロンモデル等、神経幹・前駆細胞以外の神経系細胞を用いたCMV感染モデルが未確立である。
|
今後の研究の推進方策 |
CMVによる細胞障害機序を明らかにする目的で、マイクロアレイ法あるいはRNA-seq解析による網羅的発現解析によって、CMV感染にともなう細胞遺伝子の発現変化を解析する予定である。CMV未感染とCMV感染との間で比較し、CMV感染後複数のタイムポイントで比較解析することで発現変動の経時変化についても解析する。網羅的解析によって得られたデータをもとに、細胞障害と関連する可能性のある遺伝子を見出した場合は、RT-PCR、western blot解析、免疫染色法などを用いてCMV感染によって特異的に発現変動する遺伝子であることを確認する。さらに、同定された細胞遺伝子がCMVによる神経障害発症機序とどのような関連があるのかについて解析を進める。 神経幹・前駆細胞からニューロンあるいはグリア細胞に効率よく分化誘導させる実験法を確立し、CMV感染モデルの構築を
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の残額はあるものの、研究計画にほぼ見合う支出合計額となった。 これまでの研究計画に沿いながら、研究目標を達成するための実験を行うに当たり、助成金を有効に活用する予定である。
|