研究課題/領域番号 |
24591617
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
辻 雅弘 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80579467)
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研究分担者 |
田口 明彦 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 部長 (10359276)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 新生児 / 脳傷害 / 虚血 / 脳梗塞 / 低酸素性虚血 / 臍帯血 / 幹細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、新生児虚血性脳障害に対する新規治療法として、臍帯血幹細胞の静脈内投与の効果を検討することである。また、本研究遂行のためには再現性の高い新規の虚血性脳障害モデル作製が不可欠であるため、そのようなモデルの新規作製を行うことも本研究の目的である。 平成24年度は、研究実施計画に則り、モデル作製を行った。生後12日の特定系統のマウスを使用し、開頭後に片側中大脳動脈を電気メスにより焼灼することにより、中大脳動脈永久閉塞モデルを作製した。期待したとおりの高い再現性をもって脳梗塞が全てのマウスにおいて発生した。梗塞体積比率を定量したところ、動物個体差は最小17.8%、最大30.4%と、非常に均質であった。梗塞部位はほぼ大脳皮質に限定されていた。急性期の脳血流低下の度合いも一定であった。行動評価においても、一定の神経機能障害を呈していた。長期生存率も8週間で85%と非常に良好であった。本モデルは新生児脳梗塞のモデルであり、既存の新生児低酸素性虚血性脳症モデルとの比較検討も行った。早速論文を執筆し投稿した。 同モデルを使用し、虚血性脳傷害に対する臍帯血幹細胞の効果を検討した。造血幹細胞を多く含む分画であるヒト臍帯血CD34陽性細胞を、動脈閉塞48時間後に静脈内投与した。この細胞投与により、形態的に脳傷害の軽減を認めた。細胞投与による悪影響(死亡率の増加や体重増加不良など)は認めていない。現在、細胞投与による脳血流の変化や、血管に対する影響などを現在解析中である。 以上の結果は、臍帯血細胞治療の有効性・安全性を示し、現在臨床試験の準備が行われている新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞療法を支持するものである。このように本研究は、前臨床試験としての意義が大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は2つであり、その1つは再現性の高い新規脳傷害モデルの作製である。こちらは既に達成でき、初年度(平成24年度)に論文投稿まで進めることができた。 もう1つの目標である、新生児虚血性脳傷害に対する幹細胞静脈内投与の効果検討も順調に進んでいる。同治療が形態的に脳傷害を軽減することを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本モデルを使用し、細胞治療の有効性の検討を、形態だけでなく、神経機能検査においても行う。また、有効性の機序検討を行う。具体的には、脳血流への影響を二次元血流解析装置を用いて行い、また、免疫組織染色により血管への影響などを検討する。 本モデルよりは脳傷害の再現性において劣るものの、確立したモデルである既存の低酸素性虚血モデルにおいても、同治療の効果を検討する。 現在、自己臍帯血幹細胞療法の臨床試験が準備中であることから、臨床に直結した問題解決型の前臨床試験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種試薬の購入(免疫組織染色用の抗体まど)。 現在当研究室に備わっている行動解析装置(ロータロッド試験装置、オープンフィールド試験装置など)以外にも行動解析が必要となれば、その解析装置を購入する。 本研究で新規作製できた新生児脳虚血モデルを米国神経科学会(Neuroscience Meeting 2013, サンディエゴにおいて11月に開催)にて発表するための出張費(演題が採択されれば、であるが)。 本年度(平成24年度)残金が出た理由は、本年度はモデル動物を用いての生理学的(脳血流測定)および行動学的実験が多く、それらは一旦測定機器を購入すればその後の実験費用は安価であるため、予定した実験費用より少なくて済んだ。一方、来年度(平成25年度)は免疫組織染色などの実験が多く予定されるため、試薬・抗体購入のために実験費用が多くかかると予想される。
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