研究課題/領域番号 |
24591617
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
辻 雅弘 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80579467)
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研究分担者 |
田口 明彦 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (10359276)
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キーワード | 新生児 / 脳障害 / 虚血 / 脳梗塞 / 低酸素性虚血 / 臍帯血 / 幹細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、新生児虚血性脳障害に対する新規治療法として、臍帯血幹細胞の静脈内投与の効果を検討することである。また、本研究遂行のためには再現性の高い新規の虚血性脳障害モデル作製が不可欠であるため、そのようなモデルの新規作製を行うことも本研究の目的である。 新生児虚血性脳障害の新規モデルマウス作製は、平成24年度にモデル作製を完了しており、25年度は論文投稿・改訂を行った。 同モデルマウスを使用し、虚血性脳傷害に対する臍帯血幹細胞の効果を検討した。造血幹細胞を多く含む分画であるヒト臍帯血CD34陽性細胞を、動脈閉塞48時間後に静脈内投与した。異種間移植であるため免疫不全マウス(SCIDマウス)を使用した。この細胞投与により、脳傷害発生7週後において形態的な脳傷害の軽減を認めた。細胞投与による悪影響(死亡率の増加や体重増加不良など)は認めていない。細胞投与による脳血流の変化を二次元Laser speckle法にて解析したところ、細胞投与24時間後において血流の低下している領域の減少を認めた。また、脳梗塞の境界域において細胞投与による血管径の拡張を組織学的に認めた。投与細胞は脳内にごく少数認めた。行動実験においては、Rotarod試験で細胞投与群はコントロール群(脳傷害+PBS投与)に比してやや良好な成績を呈したが有意な改善ではなかった。Open-field試験においても有意な改善は認めなかった。これらの結果を論文にまとめた。 以上の結果は、臍帯血細胞治療の有効性・安全性を示すものであり、現在臨床試験の準備が行われている新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞療法を支持する。このように本研究は、前臨床試験としての意義が大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は2つであり、その1つは再現性の高い新規脳傷害モデルの作製である。こちらは平成25年度に論文発表(Experimental Neurology 2013;247:218-225)を行い、国際学会でも発表(Annual Meeting of Society for Neuroscience 2013 at San Diego, USA)することができた。 もう1つの目標である、新生児虚血性脳傷害に対する幹細胞静脈内投与の効果検討も最近論文として発表することができた(Neuroscience 2014;263:148-158)。
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今後の研究の推進方策 |
現在、自己臍帯血幹細胞療法の臨床試験が準備中であることから、臨床に直結した問題解決型の前臨床試験を行う。最近、低体温療法の有効性が欧米での大規模二重盲検臨床試験により証明され、本邦でも平成24年に治療ガイドラインが作成された。低体温療法が標準治療となったことから、臍帯血幹細胞治療も今後は、低体温療法との併用で効果を検証すべきである。その動物実験実施に向けて検討を行う。さらに、臨床でも検査可能なものとして、MRI/PET画像検査での評価を想定し、その予備実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
「新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞療法」の臨床試験を多施設共同で計画している。臨床試験実施に先だって、厚労省「ヒト幹指針」に基ずいて審査を受けた際に、本多施設共同研究グループ自身の前臨床試験結果の公表を求められた。そのため、予定していた詳細な検討の一部を後回しにし、主要な実験データが得られた段階で論文執筆を優先した。このため、実験物品費が予定していた額より少なくなった。その差額は次年度に繰り越し、次の実験費用とする。 臍帯血幹細胞療法の効果を詳細に検討するための実験費用として使用する。
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