研究課題
本研究の目的は、1)新生児虚血性脳障害に対する新規治療法として、臍帯血幹細胞の静脈内投与の効果を検討すること、2)本研究遂行のために再現性の高い新規の虚血性脳障害モデル開発を行うこと、である。特定系統(CB17)のマウスを使用し、開頭後に片側中大脳動脈を電気メスにより焼灼することにより、中大脳動脈永久閉塞モデルを作製した。全てのマウスが高い再現性をもって脳梗塞を来した。脳障害の程度は非常に均質(梗塞体積比率は最小の個体が17.8%、最大の個体が30.4%)で梗塞部位はほぼ大脳皮質に限定されていた。一定の神経機能障害を呈し、生存率は8週間で85%と良好であった(Tsuji et al., Exp Neurol 2013)。同モデルを使用し、臍帯血幹細胞治療の効果を検討した。造血幹細胞を多く含む分画であるヒト臍帯血CD34陽性細胞を動脈閉塞48時間後に静脈内投与した。異種間移植であるため免疫不全マウス(SCID/CB17マウス)を使用した。細胞治療によって脳傷害発生7週後において形態的な脳傷害の軽減を認めた。細胞投与による悪影響(死亡率の増加や体重増加不良など)は認めなかった。細胞投与24時間後において血流の低下している領域の減少を認めた。脳梗塞の境界域において血管径の拡張を組織学的に認めた。投与細胞は脳内にごく少数認めた。行動実験では、Rotarod試験において部分的な改善を認め、Open-field試験では有意な変化は認めなかった(Tsuji et al., Neuroscience 2014)。以上の結果は、臍帯血細胞治療の有効性・安全性を示すものであり、多施設共同で「新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療」の臨床試験を開始した。
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Brain Dev
巻: 37 ページ: 376-386
10.1016/j.braindev.2014.06.010.
Neuroscience
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