研究課題
CNN3ホモ欠損マウスの表現型の一つである脳ヘルニアは神経管閉鎖過程の障害が原因であることが知られている。この神経管閉鎖障害はさらに神経上皮細胞のアポトーシス、増殖(分化)と収縮異常の3つのカテゴリに大別されており、CNN3ノックアウトマウスでは胎齢期8.75日胚における神経上皮細胞のアピカル領域でのミオシン軽鎖のリン酸化レベルに差が生じていた。しかしながらこの領域のF-アクチン形成に大きな差は認められなかった。これらのことから神経上皮細胞アピカル領域におけるアクトミオシンケーブル形成に異常が生じることによって神経上皮細胞の移動や収縮過程で障害が生じ、結果として脳ヘルニアの表現形を示すのではないかと考えている。またアポトーシスや細胞増殖・分化レベルに差が無いことも確認している。細胞の収縮・移動に障害が生じていることを確認するために胎児由来繊維芽細胞(MEF)を単離して運動能を調べたところ、ノックアウトマウス由来のMEFでは野生型に比べて有意に運動能が低下していることをタイムラプス観察で確認した。雌マウスの妊孕性低下に関しては野生型やヘテロに比べてホモマウスでは出生胎仔数と排卵数に有意な差が認められたため、排卵機能に関して排卵時の細胞収縮とLHおよびFSHの分泌量に有意な差があるかどうか解析を進める予定である。またCTXによる筋損傷からの再生に関してはCNN3ノックアウトマウスでは若干再生が遅れている傾向が認められるものの単離した筋衛生細胞を用いたin vitro分化誘導実験では野生型との差は認められなかった。マウスの皮膚創傷治癒過程においてCNN3をノックダウンすると細胞の移動、収縮能が低下することからCNN3が創傷治癒過程に関与しているのではないかと報告してきたが、予想に反して治癒に至る過程でCNN3ノックアウトマウスと野生型にほとんど差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
概ね二年目以降に計画していた実験計画は達成している。神経管閉鎖過程では神経上皮のアピカル領域におけるアクトミオシンケーブル形成に障害が生じていることが原因であり、眼瞼閉鎖過程ではperidermal cellの発生に障害が生じたことが閉鎖障害の一因であることを見いだした。胎盤や筋肉の細胞融合過程および創傷治癒過程では我々が報告してきた結果と若干差違が認められおり現在我々が提唱しているCNN3を中心としたモデルでは説明しきれず、他の分子が中心的な役割を果たしているか、CNN3の他にも協調的に働く分子が存在しているのではないかと考えている。
神経管閉鎖過程における神経上皮細胞でのCNN3の発現と局在、眼瞼閉鎖過程におけるperidermal cellでのCNN3発現がそれぞれの閉鎖過程で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また我々は細胞内でのCNN3キナーゼとしてROCK1/2を同定しているので、次に上記の閉鎖過程でROCK-CNN3シグナルが機能しうるかどうかについて解析を進める予定である。具体的にはROCK欠損マウスにおいて眼瞼や神経管閉鎖部のCNN3リン酸化レベルに差がみられるかどうか各組織切片に対して作成したリン酸化CNN3特異的抗体を用いて免疫染色を行う。ROCK2欠損マウスに関しては必要数のマウスを準備している段階にあり整い次第E8.5-E10.5日胚の神経管閉鎖時期、E15.5-E16.5日胚の眼瞼閉鎖時期について解析を始める。さらにROCK2での解析に目処が立てばROCK1欠損マウスも入手し同様の解析を行う、必要であればダブルノックアウトマウスを作成し神経上皮細胞におけるCNN3のリン酸化レベルに変化が見られるかどうか解析を行う予定である。
予定していたマウスの入手が遅れているため次年度使用額に計上したROCK1およびCNN2ジーンターゲティングマウスのIVFと繁殖、実験にかかる費用
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