研究課題/領域番号 |
24591621
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
滝吉 典子 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30568895)
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研究分担者 |
中野 創 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90281922)
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キーワード | カテプシンC / パピヨン・ルフェーブル症候群 / セリンプロテアーゼ / 過角化 / 外的刺激 |
研究概要 |
カテプシンCが原因遺伝子であるパピヨン・ルフェーブル症候群での過角化の機序は不明である。今回、その過角化が掌蹠、肘頭、膝蓋などの被刺激部であること、さらに本症の中でもごく軽微な皮膚症状を呈する症例も報告されていることに着目している。本研究の目的は、カテプシンCの欠損に外的刺激が加わることにより、過角化が引き起こされることを明らかにすることにある。本年は、1)培養表皮細胞での角化異常の確認:我々は本症患者の一人から表皮細胞を培養し形態を確認しているが、特に目立った異常は確認されていない。培養表皮細胞に角化を誘導し、その後カテプシンC、カリクレイン5や8をくわえることにより、細胞の結合が変化するかを確認。患者培養細胞株でも同様の実験を行い、正常との比較も行った。また、肉眼的な観察では小さな変化を見ることができない可能性もあるので、処理後にウエスタンブロットを行い、デスモグレイン1やコルネオデスモシンの分解の有無を生化学的に解析する。2)カテプシンC抑制表皮細胞を用いたin vitroでの角化異常の解析:不死化ヒト表皮角化細胞株であるHaCaT細胞に、カテプシンCのshRNAをトランスフェクションし、プラスミドの薬剤耐性遺伝子を利用したセレクションによりカテプシンCを抑制したstable cell lineを作成する。培地中に、表皮を過角化させるフォルボールエステルのTPAを加え、カテプシンCを抑制細胞と抑制していない細胞間で、細胞形態に差が生じるかを顕微鏡で観察。さらに、それらを回収してRNAや蛋白を抽出。角化マーカーであるインボルクリンやケラチン10の発現が、カテプシンC抑制細胞で増加しているかをリアルタイムRT-PCRやウェスタンブロットで確認する作業を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カテプシンCが原因遺伝子であるパピヨン・ルフェーブル症候群での過角化の機序は不明で、今回、その過角化が掌蹠、肘頭、膝蓋などの被刺激部であること、さらに本症の中でもごく軽微な皮膚症状を呈する症例も報告されていることに着目した。本研究の目的は、カテプシンCの欠損に外的刺激が加わることにより、過角化が引き起こされることを明らかにすることにある。本年は、培養表皮細胞での角化異常の確認、カテプシンC抑制表皮細胞を用いたin vitroでの角化異常の解析が計画通り進行した。
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今後の研究の推進方策 |
1)ノックアウトマウスでの角化異常の解析:カテプシンCのノックアウトマウスが作成されて、好中球でのセリンプロテアーゼの活性が障害され、好中球の機能異常は報告されている。しかし明らかな掌蹠角化の報告はない。そこで、既に作成したノックアウトマウスを用い前肢や後肢を詳しく観察し、組織学的、電顕的に検討する。また、他のカテプシンがカテプシンCの作用を代償している可能性から、それらの抑制剤やsiRNAをノックアウトマウスの培養表皮細胞に投与し、細胞の状態を観察する。さらに、それらの抑制剤をノックアウトマウスにIn vivo で投与し、表現型の変化を観察する。 2) 過角化を亢進させる引き金として、皮膚への外的刺激が関わっていることの証明:これまで、掌蹠角化症について、過角化が何故掌蹠などに限局するのかという根本的な点について具体的に研究はなされていない。我々は、パピヨン・ルフェーブル症候群における過角化が、掌蹠のほか、肘頭、膝蓋などの被刺激部であることに注目し、作成したノックアウトマウスを用いて、刺激群と被刺激群で角化の程度に差が生じるかを検討する。対象はカテプシンCノックアウトマウス、野生型マウスに各々に試薬を塗布する刺激群、試薬を塗布しない非刺激群の計4グループとする。まず、表皮を角化させることが知られるフォロボールエステルのTPAや、一次刺激性の皮膚炎を起こす塩化ベンザルコニウム、フェニルプロピオル酸エチルをマウスの掌蹠、及び背部の皮膚に塗布。試薬塗布後、24時間、48時間、72時間、7日後の皮膚を採取し、各グループ間で表皮の過角化の程度に差がみられるかを組織学的に検討する。前述の試薬を塗布した際に、セリンプロテアーゼであるカリクレイン5、8の発現の変化を免疫組織化学的検索法、およびそれぞれの酵素活性を測定し、各グループ間における差を検討する。
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