研究概要 |
本研究においては、自然免疫機構が皮膚炎症性疾患に与える影響を検討するために、表皮細胞と樹状細胞における抗菌ペプチドカセリサイディンが与える影響を調べた。カセリサイディンによって、表皮角化細胞から誘導されるサイトカインとしてIL-1ファミリーに属 するIL-36群を同定し、その発現が幾つかの皮膚炎症性疾患で増加していることを確認した。表皮角化細胞におけるIL-36の誘導は、カセリサイディンの高発現と相まって、IL-8, IL-1, IP-10, CXCL1, CCL20, CXCL9などのケモカイン発現を表皮角化細胞に増強させ、さ らに単球を活性化させるサイトカイン(G-CSF, GM-CSF, MCP-1, CCL5, IL-6, etc)の発現も誘導した。これらは、p38 MAPKもしくはNF-kBシグナルを介する転写制御によって誘導された。カセリサイディンによるケモカインとサイトカイン誘導の一部は、IL-36 siRNAに よって抑制されたことから、IL-36は表皮角化細胞でオートクライン様式で働き、炎症性サイトカインの誘導に関与していることが示唆された。カセリサイディンで刺激された表皮角化細胞の培養上清は、ヒト末梢血由来単球(CD14+)にCD206の発現を誘導し、炎症性 マクロファージへの誘導を来すことが示された。これらの結果は、感染や創傷機転によって誘導されるカセリサイディンが、IL-36の誘導を介して皮膚炎症性疾患の誘導に関与することを示唆した。現在、投稿論文の査読後改訂中。
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