研究課題
リンパ流の障害が腫瘍免疫や血管炎にどのような影響を与えるのか、これまでマウスを用いた研究はほとんどなされていない。カポジ肉腫ウイルス遺伝子をリンパ管内皮細胞に発現したマウスはリンパ管が存在するもののリンパ流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。このマウスを用いて、本年度は血管炎におけるリンパ流の役割について解析した。抗ニワトリ卵白アルブミン抗体を皮内に注射した後、ニワトリ卵白アルブミンを尾静脈から注射して血管炎を作成した。リンパ流に障害があるマウスでは、惹起4時間後の浮腫は野生型マウスより軽度であったが、8時間後の出血は同等であり、12時間後の出血は野生型マウスより激しかった。組織学的な血管炎やIL-6、TNF-α、CXCL1、CXCL2などのサイトカインの発現も、早期はリンパ流に障害があるマウスのほうが野生型マウスよりも軽度であり、次第に野生型マウスよりも増悪することが観察された。血管炎惹起後の炎症の遷延は、下肢などのリンパがうっ滞しやすい部位で血管炎が悪化しやすいという臨床における観察に合致する。しかし、リンパ流に障害があると血管炎の初期反応が減弱する理由は不明な点が多い。血管炎はアルザス反応の1つであり、抗原抗体複合物が肥満細胞や組織球のFcγ受容体IIIに結合することによって反応が開始すると考えられている。リンパ流に障害があるマウスの腹腔内の肥満細胞や組織球の細胞表面のFcγ受容体IIIの発現は、野生型マウスと比べて低下していることが判明した。リンパ浮腫の環境下では、細胞にストレスがかって表面分子の発現が変化する可能性を示しており、極めて興味深い知見を得ることができた。
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