研究課題/領域番号 |
24591626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 一恭 岡山大学, 大学病院, 助教 (70452571)
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研究分担者 |
近藤 格 独立行政法人国立がん研究センター, 創薬プロテオーム研究分野, 分野長 (30284061)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HDAC阻害剤 / HSP70 |
研究概要 |
まず始めに、我々は単独では増殖抑制を来さない濃度のKNK437を併用することで、ボリノスタットやバルプロ酸の増殖抑制効果が増強することを示し、その効果がアポトーシスの亢進によることを示した。この効果はHSPA1A低発現株であるJurkatにおいても認められたが、高発現株であるTL-SUやHut78ではより強い効果が認められた。 そこでHSPA1AのHDAC阻害剤の感受性に与えるをより明らかにするために、遺伝子導入の手法を用いてHSPA1Aを過剰発現したJurkatの亜株を作成し、過剰発現させた亜株ではコントロールの亜株と比べて、ボリノスタット、バルプロ酸いずれにおいても増殖抑制効果が落ちること、アポトーシスの誘導が減弱していることを明らかにした。 さらにJurkat細胞を用いてそのメカニズムの解析を行ったところ、この減弱はcaspase3、caspase9依存性で、ミトコンドリアの膜電位の変化も抑制されていた。ウエスタンブロットでもコントロールの細胞ではアポトーシスを促進させる分子であるBadがHDAC阻害剤の負荷後に発現が上昇しているのに対し、HSPA1A過剰発現株では変化を認めなかった。さらに過剰発現株ではコントロール亜株と比べて抗アポトーシス分子であるbcl-2やbcl-xlの発現が亢進していた。 即ちHSPA1Aの過剰発現はJurkat細胞においてはミトコンドリア系のアポトーシスを抑制することにより、HDAC阻害剤の感受性を弱めていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はHSPA1AによるHDAC阻害剤の抗腫瘍効果の減弱作用の一因を明らかにすることができた。さらに次年度以降行う予定であるプロテオーム解析の手法の確立も行えた。
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今後の研究の推進方策 |
HDAC阻害剤の効果は遺伝レベルだけではなく、タンパク質に翻訳された後の翻訳後修飾にも関わる。我々はProtomapや2D-DIGEなどプロテミクスの手法を確立しており、遺伝子導入の手法を用いてHSPA1Aの発現を亢進もしくは抑制した細胞株にHDAC阻害剤を添加した際に変化するタンパク質群の網羅的解析を行うことでHSP70がHDAC阻害剤の感受性に与える影響を網羅的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り本年度は細胞内タンパク質の網羅的解析を行う予定であり、プロテオミクス関連の試薬に多くの経費が必要となる。また研究成果を積極的に発表するために出張費用も申請する。
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