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2012 年度 実施状況報告書

沖縄に多発する頭部血管肉腫の発症に関与する病因ウイルス・外来遺伝子断片の探索

研究課題

研究課題/領域番号 24591631
研究種目

基盤研究(C)

研究機関琉球大学

研究代表者

高橋 健造  琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291425)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード血管肉腫 / カポシ肉腫 / ウイルス / 発がん / 外来遺伝子
研究概要

沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。 真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、血管肉腫の発症に直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考えた。 本課題では、血管肉腫の原因ウイルス・外来性遺伝子の断片を発見し病態への糸口をつかみ、将来の診断法や治療法の開発にまでの発展を目的とする。
カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。このHHV8への感染率が沖縄県、中でも宮古島では若干高いとも言われている。そこで、本年度はHHV-8ウイルスを含め8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、さらに数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする研究課題である。申請時の計画のように、まず血管指向性の強い発現ウイルスとして、また同様の地域性の強い血管腫瘍の原因となるウイルスとしてヒトヘルペス8型(HHV-8)が存在することより、本年度はHHV-8ウイルスを含め8種のヒトヘルペスウイルス遺伝子や、さらに数十種類以上の動物感染性のヘルペスウイルス群に共通する遺伝子配列を選択し、イノシン残基を組み込み、アニール温度を数段階に調節することで、既知のヘルペスウイルスファミリーは全て増幅しえる遺伝子プラ-マーの組み合わせを数カ所に設定し、血管肉腫患者組織のDNAをテンプレートとして、PCR増幅を多様なアニール温度で試みた。
アニール温度の低下と共に、多様なサイズの遺伝子断片が増幅されたので、これらをすべく逐次、遺伝子配列を決定したが、ヘルペス群、あるいは新規のウイルスと思われる遺伝子配列の増幅は全く生じなかった。増幅される遺伝子群は全てヒトゲノムの遺伝子配列が僅かな相動性の元に増幅された結果であった。この解析より血管肉腫の原因ウイルスとして既知のヘルペス群に近い外来病原体の可能性は低いと考えた。
いずれにせよ、ヘルペス一族が関与している可能性は少ないと判断が出来た。次年度からは、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法などの手法による病原ウイルスの探索を開始する。

今後の研究の推進方策

ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法、サブトラクションライブラリーのランダムcDNAスクリーニング、クロスPCRハイブリ法などの手法を駆使して、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在を明らかにする。
ゲノム上でのDNAサブトラクションクローニングは、RNA (cDNA)サブトラクションよりは遙かに困難であることは知られているが、最近では別種の皮膚腫瘍であるメルケル腫瘍において完遂され、その原因ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)が同定されている。
以下に、従来のゲノムサブトラクション法に若干の改良を加え解析を行う。具体的なゲノムサブトラクション法としては: 新規血管肉腫患者の腫瘍組織より全DNAを抽出する。その全DNAを用いたサブトラクションを行う。沖縄地方からは遠い出身者の末梢血ゲノムDNAを対象として用いる。
較数倍量をビオチンラベルしたコントロール遺伝子断片と、腫瘍由来DNAを熱処理後にアニールしストレプトアビジンで沈降、上清のビオチンラベルされないDNA分画を回収するという手法を数回繰り返す。最終的に残存するDNA分画は非常に微量となり、そのままでのライブラリー化は困難であると考えられる。サブトラクトされたDNA断片に均一性の高いPCR増幅をかけ、通常のプラスミドベクターにサブクローンしランダムで配列を決定する。
随時、確認された遺伝子断片の遺伝子配列は、その性状を遺伝子バンクで確認し、血管肉腫の組織に特異的に単離された断片については、他の血管肉腫組織由来のDNAを用い、PCRやサザンブロット法により、疾患特異性を確認する。そのための血管肉腫組織由来のDNA、mRNAは十数検体より抽出されて保存されている。

次年度の研究費の使用計画

上記で述べたように、改良したゲノム、cDNAサブトラクション法に使用する試薬や、ライブラリー作成試薬やキットを購入する。
サブトラクションタイプのクローニングでは純化の難しい発現の少ない遺伝子であった際には、次の手段として次世代シークエンサーの使用を考え、そのシークエンス試薬などの消耗品を購入する。次世代シークエンサー自体は琉球大学に準備されている機材を使用する。
またサブトラクション、次世代シークエンサーの解析いずれにも、コントロールとすべくヒト正常血管内皮細胞など、各種の培養細胞の購入、培地の購入にも使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)

  • [雑誌論文] Re-exacerbation of cutaneous lesions in Bazex syndrome(acrokeratosis paraneopiastica) without tumor recurrence.2012

    • 著者名/発表者名
      Ono S, Takahashi K, Miyachi Y, Kabashima K.
    • 雑誌名

      Eur J Dermatol

      巻: 22 ページ: 809-811

    • DOI

      10.1684/ejd.2012.1877.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Case of Conradi-Hunermann-Happle syndrome with alopecia:Histological examination of affected follicles.2012

    • 著者名/発表者名
      Yajima M, Muroga E, Nomura T, Arakawa T, Takahashi K, Matsubara K, Kabashima K, Miyachi Y.
    • 雑誌名

      J Dermatol

      巻: 39 ページ: 1059-60

    • DOI

      10.1111/j.1346-8138.2012.01593.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deep venous thrombosis and pulmonary embolism secondary to co-administration of thalidomide and oral corticosteroid in a patient with leprosy.2012

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi S, Yamamoto Y, Hosokawa A, Hagiwara K, Uezao H, Takahashi K.
    • 雑誌名

      J Dermatl

      巻: 39 ページ: 711-714

    • DOI

      10.1111/j.1346-8138.2012.01484.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Systemic lupus erythematosus complicated with protein-losing enteropathy: a case report and review of the published works2012

    • 著者名/発表者名
      Awazawa R, Yamamoto Y, Mine Y, Nakamura I, Kishimoto K, Kinjuo F, Hagiwara K, Fujita J, Uezato H, Takahashi K.
    • 雑誌名

      J Dermatol

      巻: 39 ページ: 454-61

    • DOI

      10.1111/j.1346-8138.2011.01404.x

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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