研究課題
沖縄県・宮古島地方に多発する、悪性血管内皮細胞肉腫(血管肉腫)の発症に関わる病原体・原因ウイルスの遺伝子断片の探索を目的とする。この腫瘍は高齢者の額部・頭部に小さな紫斑・出血斑として発症し、急速に結節化・潰瘍化し顔貌を破壊し、肺出血による死に至る悪性度が極めて高い原因不明の腫瘍である。進行が極めて早く月単位で予後が変化し、頭部・顔面に出血と醜形を来すヒトの固形がんの中でも極めて、悪性度の高い腫瘍である。真皮の微小血管を発生母地とする腫瘍にはカポシ肉腫とこの血管肉腫が挙げられるが、両腫瘍とも沖縄・宮古島地方には非常に高率に発症する。近年のHIV依存性のカポシ肉腫にせよ、沖縄県に多い高齢者の古典型のカポシ肉腫にせよ、カポシ肉腫各型の発症にはヒトヘルペス8型(HHV8)ウイルスの関与が知られている。この偏った地域発症性と、高齢者に多中心的に急速に発症する経過より、今回の研究対象である血管肉腫の発症にも、HHV8以外の直接寄与する発癌ウイルスの存在を強く考える。本課題では、琉球大学に数多い血管肉腫患者や疾患コントロールとしてのカポシ肉腫の組織を用い、ゲノムサブトラクション法、cDNAサブトラクション法、サブトラクションライブラリーのランダムcDNAスクリーニング、クロスPCRハイブリ法などの手法を駆使して、血管肉腫患者の組織に共通して存在する、既知あるいは未知のウイルス遺伝子や外来遺伝子断片の存在を明らかにするのが一義的な目標である。また診断的な面からも、このような血管肉腫に共通した遺伝子断片、さらには発現蛋白・特異蛋白の存在を見いだすことで、初期においてはしばしば病理診断に苦慮する血管肉腫の診断が、より迅速に確実に断定的に可能になり、さらには腫瘍特異的な免疫療法へ向けた1ステップになるかと考える。
すべて 2014
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