研究課題/領域番号 |
24591632
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
井上 菜穂子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (00509515)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イメージング / セラミド / 皮膚 / 脂質 |
研究概要 |
本研究の目的は皮膚組織における脂質代謝物の空間的な分布を明らかにする事である。表皮特異的な脂質であるセラミドは、皮膚のバリア機能や免疫に関与していると考えられている。セラミドには複数の分子種が存在しているが、それらを個々に局在可視化する手法はこれまで存在せず、分子種ごとの性質・機能などの詳細な解析が困難であった。本研究では脂質の局在可視化法として注目されているイメージングマススペクトロメトリーの手法を用いて、皮膚組織内代謝物、特にセラミドの局在可視化法の確立を試みることを目的とする。 初年度である本年は、マウス表皮、特に角層の形態を保持した状態で凍結切片を薄切する条件を検討した。IMSでは従来のOCTコンパウンドによる包埋は、ポリマー由来のピークがバックグラウンドとなり不可能である。そのため、アガロースゲル、カルボキシメチルセルロースなどの他の封入剤の検討を行った。その結果、カルボキシメチルセルロースで包埋することにより、形態を保ったままIMS用の切片を作成することに成功した。次に、様々なマトリクスを用いて、皮膚組織に最適なマトリクスの検討を行い、セラミドに最適なマトリクスを選択し、これらの手法の確立の結果を論文として発表した。本年度の検討により、主要なセラミド成分であれば検出することが可能となり、共同研究において各種皮膚代謝疾患異常マウスを用いたセラミドの局在解析についても検討を行い、セラミドの可視化を行った。次年度以降には、さらなる技術開発を行い、微量脂質の検出も可能にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度以降に計画していた、実際の動物試料を用いた解析についてもすでに着手しており、主要なセラミドについて、さまざまな皮膚切片を用いた解析が可能になっていることから、当初の計画よりも進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に確立した技術のさらなる高感度化を目指し、手法のブラッシュアップを行う。また、すでに着手している各種モデルマウスをもちいたセラミド代謝物の局在可視化についても引き続き検討を行う。更に、Ion Trap機能を用いて、特定の分子量のみを選択的に四重極にトラップし、イオンを蓄積する事によって検出感度を向上させるシステムについても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の予算において、予定していた消耗品購入が安価だったため、残金が発生した。次年度も本年度同様、消耗品費、及び測定のための旅費、さらに学会や論文発表のための別刷り代を計上した。本研究課題ではIMSを用いた解析を行っている。解析条件の基礎検討を行うためには、多くの消耗品を必要とする。IMS専用のITOスライドグラスは専用に導電性コーティングされたものを使用する必要があり、初期の基礎検討におけるランニングコストが高い。質量分析を用いた解析の他、組織学的な解析や、免疫染色、生化学的解析など多面的な解析を行うために必要な試薬、器具の購入のための経費を算出した。
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