研究課題/領域番号 |
24591633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松崎 ゆり子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40255435)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メダカ / トランスジェニック / RAS / 薬剤スクリーニング |
研究概要 |
1.野生型胚を用いた候補薬剤の1次スクリーニング:黒色素細胞形成をはじめとする神経冠細胞系列遺伝子群を標的とするため、野生型メダカ胚を用いて黒色素細胞の消失をスクリーニングの指標とした。48ウェルプレート1ウェルあたり5受精卵を準備、受精1日後にライブラリー薬剤を33μM 濃度で投与し3-5日後に写真撮影を行って、対照群との色素量の差を目視により確認した。差のみられた薬剤については10個体2ウェル以上で再検査し再現性の確認を行った。それにより得られた候補薬剤に関しては二次スクリーニングに用いる予定である。メダカでは卵膜が強固で、ゼブラフィッシュに比べ高濃度の薬剤に曝露しないと変化が見られなかったため、先行論文に倣ってゼブラフィッシュ野生型胚についてもスクリーニングを行うこととした。48ウェルプレートの1ウェルあたり10の受精卵を準備し、薬剤濃度10μMとして使用した。投与2日後と投与前の写真撮影による比較を行い、黒色素胞の減少・消失のみられた薬剤について評価し候補を選定している。 2.HRASトランスジェニックメダカを用いた治療実験:二次スクリーニング系を確立するため、ソラフェニブで治療実験を行った。黒色素胞を過剰発現しているメダカをソラフェニブ投与群と対照群とで各々5個体以上準備し、薬剤濃度は0.1μMから1μM、投与時間は1回につき24時間もしくは48時間、72時間、投与回数は1週間1-2回、4-12週間とした。薬剤投与前と投与後(投与開始から2週間後、および4週間後)個体ごとに写真撮影を行い、黒色領域の変化を計測した。その結果、条件によってソラフェニブ投与群で黒色領域の増加に有意な抑制が見られる場合とみられない場合があり、測定方法、投与開始の個体年齢について再考の余地がある。生存曲線の解析では、常に有意な生存期間の延長がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度遂行予定であった以下の3項目について評価した。 1.野生型近交系黒メダカの選択について:基礎生物学研究所 バイオリソース研究室より体色が黒い近交系を2系統入手したが生育能力が弱く繁殖することができなかったため、既に飼育していた系統と交配し、雑種の中で体色の黒い個体を選別した。得られた雑種系統で一次スクリーニングを行う事が出来たが、卵膜が固くメダカ胚を用いること自体に難点があったため、年度途中にゼブラフィッシュ野生型胚を用いることに変更した。いずれにせよ1次スクリーニングに必要な系統は得ることができた。 2.低分子化合物ライブラリー及び既存薬ライブラリーを用いた一次スクリーニング系の開発: 黒色素細胞形成をはじめとする神経冠細胞系列遺伝子群を標的とするため、野生型メダカ胚を用いて黒色素細胞の消失をスクリーニングの指標とした。48ウェルプレート1ウェルあたり5受精卵を準備、受精1日後にライブラリー薬剤を33μM の濃度で投与し3-5日後に写真撮影を行って、対照群との色素量の差を目視により確認した。差のみられた薬剤については10個体2ウェル以上で再検査し再現性の確認を行った。それにより得られた候補薬剤に関しては二次スクリーニングに用いる予定である。ゼブラフィッシュ野生型胚についてもスクリーニングを行っており、順調に遂行されている。 3.トランスジェニックメダカを用いた治療実験:ソラフェニブでの二次スクリーニング条件検討。悪性黒色腫を発症しているメダカをソラフェニブ投与群と対照群とで各々5個体以上準備し、薬剤濃度は0.1μMから1μM、投与時間は1回につき24時間もしくは48時間、72時間、投与期間は1週間1-2回、4-12週間について試験を行った。黒色域の面積計測については撮影方法、体色が結果に影響しており、検討が必要であった。生存曲線については再現性のある結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
一次スクリーニングの継続: ゼブラフィッシュ胚を用いたライブラリーの薬剤スクリーニングがまだ終了していないため、引き続きスクリーニングを行う。 候補薬剤の選定: 一次スクリーニングの結果を随時まとめているが、黒色素胞の減少・消失のみられた薬剤について二次スクリーニングを行う薬剤を決定する。一次スクリーニングで得た候補薬剤については、生存能が低下することなく色素胞の減少効果も高い濃度を判定する。その際、個体数を100-200とし、可能であれば製造元の異なる試薬で試みる。また、候補薬剤の分子構造からアルゴリズムなどを用いて機能を推定し、関与していると考えられるシグナル伝達系、反応系を検索する。 HRASトランスジェニックメダカを用いた二次スクリーニングもしくは治療実験:一次スクリーニングで得られた候補薬剤を用いて二次スクリーニングを行う。また、H-Ras阻害剤FTI-277を用いて治療実験を行う。FTI-277はH-Ras が細胞を形質転換するために必要なファルネシル化のモチーフCAAXに対してデザインされたペプチドであるりin vitroにおいてH-Ras プロセシングを阻害することが確認されている(Bernhard et al: Cancer Res.56; 1727, 1996)。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要となる経費は、前年とほぼ同じとなる予定である。 消耗品費としては、メダカ飼育費(餌、環境整備他)、個体を扱う際のプラスチック器具費、スクリーニングで得られた候補薬剤の追加購入、既知HRAS阻害薬、候補薬剤で治療実験をする場合には個体組織を用いてウェスタンブロッティング、組織染色を行うので、抗体類、組織染色試薬類が必要となる。 また、当該分野での新しい実験技術、飼育技術を得るための国内旅費、小型魚類飼育に必要な人件費を計上する。
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