研究課題/領域番号 |
24591633
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松崎 ゆり子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40255435)
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キーワード | メダカ腫瘍モデル / HRAS高発現 / トランスジェニックメダカ |
研究概要 |
1.野生型胚を用いた候補薬剤の1次スクリーニング:昨年度に引き続き、黒色素細胞形成をはじめとする神経冠細胞系列遺伝子群を標的とした、ゼブラフィッシュ野生型胚についてスクリーニングを行った。48ウェルプレートの1ウェルあたり10の受精卵を準備し、薬剤濃度10μMとして使用した。飼育水への投与2日後、投与群と対照群との比較を行い、黒色素胞の減少・消失のみられた薬剤について評価し候補を選定している。現在までに360の薬剤でスクリーニングを終えた。 2.HRASトランスジェニックメダカを用いた薬剤評価実験:2次スクリーニング系を確立するため、RASシグナル遺伝子産物の阻害剤を用いて治療実験を行った。黒色素胞を過剰発現しているメダカを阻害剤投与群と対照群とで各々準備し、薬剤濃度は0.25nM-1μM、投与時間は1回につき24時間-96時間、投与回数は1週間1-2回、4-12週間とした。薬剤投与前と投与後、薬剤効果の指標としては、個体写真の黒色領域の変化、生存期間、黒色組織から抽出したタンパクによるウェスタンブロッティングを用いた。その結果、BRAFキナーゼ阻害剤を4週間に8回24時間投与した場合、生存期間が有意に延長した。またMEK阻害剤を2週間に2回72時間連続投与した後の、黒色部タンパクによるウェスタンブロッティングではリン酸化ERKのタンパク量が著しく低下した。これらの結果から、HRAS腫瘍メダカは薬剤の水中投与による評価が可能であると考えられる。 3.HRASトランスジェニックメダカ腫瘍部分RNAを用いた遺伝子発現解析:HRASトランスジェニックメダカ眼球腫瘍部分と対照となる野生型眼球部分からRNAを抽出しDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。HRAS高発現により発現が上昇した遺伝子およびその阻害剤について次年度解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度遂行予定であった3項目について評価し、新規に行った項目を付記した。 1.ゼブラフィッシュ野生型胚を用いた1次スクリーニング途中経過:ゼブラフィッシュの産卵状況が非常に悪くスクリーニングの行えない状況が続いている。飼育条件、交配条件などを工夫し、少しでも多くのスクリーニングができるよう検討を重ねる必要がある。 2.候補薬剤選定の途中経過:1次スクリーニングで得られたいくつかの候補について、個体数を増やして濃度を段階希釈し再検討すると多くの場合、野生型と差のない表現型になった。さらなる候補選定が必要である。 トランスジェニックメダカを用いた薬剤評価の検討を遂行した:薬剤投与前と投与後、薬剤効果の指標として、個体写真の黒色領域の変化、生存期間、黒色組織から抽出したタンパクによるウェスタンブロッティングを用いることで有意な結果が得られる薬剤があった。HRAS腫瘍メダカは薬剤評価が可能であるという結果が得られ、遂行予定項目は達成した。 3.H-Ras阻害剤FTI-277投与実験を遂行した:FTI-277はH-Rasファルネシル化の阻害剤であるが、今年度行った投与実験においては、生存期間の延長、RAS下流シグナルの抑制などの効果は見られなかった。 4.遂行予定項目のほか新たにHRASトランスジェニックメダカ腫瘍部分RNAを用いた遺伝子発現解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
1次スクリーニングの継続:ゼブラフィッシュ胚を用いたライブラリーの薬剤スクリーニングがまだ終了していないため、引き続きスクリーニングを行う。 候補薬剤の選定:1次スクリーニングの結果得られた薬剤についてゼブラフィッシュ胚のin situ hybridizationを行い、神経冠特異的遺伝子の発現が低下した薬剤について、2次スクリーニングを行う。 HRASトランスジェニックメダカ腫瘍部分RNAを用いた遺伝子発現解析:平成25年度、HRASトランスジェニックメダカ眼球腫瘍部分と対照となる野生型眼球部分からRNAを抽出しDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行った。次年度、HRAS高発現により発現が上昇した遺伝子およびその阻害剤について解析を行う。 HRASトランスジェニックメダカを用いた二次スクリーニングもしくは治療実験:ゼブラフィッシュ一次スクリーニングもしくはメダカ癌モデルDNAマイクロアレイで得られた候補薬剤を用いて投与実験を行う。
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