研究代表者が樹立したメダカHRASG12V導入系統を二次スクリーニングに用いて、個体ベースの新規抗癌化合物スクリーニングシステムを確立することが本研究の主たる目的である。1次スクリーニング:昨年度に引き続き、黒色素細胞形成をはじめとする神経冠細胞系列遺伝子群を標的とした、ゼブラフィッシュ野生型胚についてスクリーニングを行った。既存薬ライブラリー(薬剤数:1164)を初期濃度10μモルで受精後5時間のゼブラフィッシュ卵に添加し48時間後、対照群と比較し胚の色素胞黒色化抑制が見られた薬剤を黒色腫瘍化抑制候補として選択した。現在までに1164の薬剤すべてについてスクリーニングを行う事が出来た。黒色化抑制効果のみられた35の試薬については、さらにゼブラフィッシュcrestin遺伝子の発現を抑制することのできる薬剤を選択することで黒色腫瘍の増殖抑制候補の取得をめざした。飼育水に薬剤添加したゼブラフィッシュ稚魚(二日胚)のcrestin 遺伝子についてwhole mount in situ hybridization(WISH)を行ったところ、6種の薬剤が候補として得られ、その薬剤については新たに試薬を購入し黒色化抑制や遺伝子発現抑制が再現できるかどうかについて検討をはじめた。二次スクリーニング: HRASG12V腫瘍メダカを用いた薬剤投与後の評価法を検討した。S6K1阻害剤であるTPCK、MEK阻害剤であるtrametinibを単独で、もしくは併用し、2ヶ月齢のHRASG12V腫瘍メダカの飼育水中に、72時間連続投与を2~10回行った後、生存期間、RAS下流シグナルタンパク質リン酸化を指標に評価を行った。単剤投与では現時点で対照群との有意な差は見られず、並行投与群は濃度を低く設定しても約2週間で死滅してしまうため投与法の改善が必要と考えている。
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