研究課題/領域番号 |
24591634
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 昌孝 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30306774)
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研究分担者 |
山上 淳 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327618)
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 米国 / アトランタ |
研究概要 |
尋常性天疱瘡抗体の結合による細胞内シグナル発生機序を解明するために必要となる尋常性天疱瘡患者血清の解析ならびに分類を開始した。具体的には、疾患活動期の患者血清で、ELISA法による抗Dsg3抗体価が高いものを抽出し、それらの血清のエピトープマッピングを順次行ってきた。その結果に基づいて、Dsg3分子に対してsteric hindranceを起こすことが予想される血清と、steric hindranceの作用は少ないものと予想され、かつより複数のエピトープを認識する抗体を含んだ血清のどちらかに分類される血清を集めた。一方で、Dsg3を始めとしたデスモゾーム関連蛋白と脂質ラフトとの関連性を調べるために、一般的なプロトコールによるショ糖密度勾配遠心分離法を用いた解析を開始した。最近の報告でみられるように、我々が行った基礎実験においても、Dsg3やプラコグロビン、デスモプラキンなどのデスモゾーム関連蛋白が脂質ラフトと関連していることを示す予備結果が得られた。さらに、超解像顕微鏡を用いて蛋白の共局在を解析したところ、Dsg3と脂質ラフトのマーカーのひとつであるCD59が共局在することがみられたものの、非脂質ラフトマーカーとして用いたクラスリンとの共局在はみられなかった。また、尋常性天疱瘡患者血清を培養ケラチノサイトに加えた際に細胞間で観察されるDsg3蛋白が含まれる線状の構造物も脂質ラフトマーカーと共局在する可能性を示唆する結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尋常性天疱瘡患者血清の集積ならびにエピトープ解析とそれに基づく分類は順調に進んでおり、またデスモゾーム関連蛋白と細胞膜上の脂質ラフトとの関連についても、予備実験の段階ではあるものの、過去の報告に矛盾しない結果が得られており、実験系の最適化に向けた条件設定が決まりつつある。さらに、超解像顕微鏡を用いた、複数の蛋白の共局在の解析も徐々に始めており、共局在の定量についての検討も行った。以上より、当初の研究の目的を達成するための計画に沿っておおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
尋常性天疱瘡患者血清の集積と解析ならびに分類は今後も継続する。Dsg3を始めとしたデスモゾーム関連蛋白と脂質ラフトとの関連性を示唆する予備結果に基づいて、その関連性を確証するための実験を行う予定である。具体的には、培養液中のカルシウム濃度を調節することによってデスモゾームが形成される場合とされない場合や、デスモゾームを欠く細胞を用いた場合などにデスモゾーム関連蛋白と脂質ラフトの関連性は変化するかどうかを解析する。また、デスモゾーム関連蛋白と脂質ラフトとの共局在に関しては定量的な解析も含めて引き続き検討を行う。さらに、尋常性天疱瘡における細胞内シグナル発生機序と脂質ラフトとの関連性の有無を調べるために、p38MAPKを始めとした各種シグナル分子を対象にそれらの阻害剤などを用いて解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度からの繰越額の発生は、効率的な物品調達を行ったこと、ならびに初年度は主として尋常性天疱瘡患者血清の集積と解析を行ったことで試薬や器具の費用がそれほどかからなかったことによる。次年度においても、尋常性天疱瘡患者血清のエピトープ解析を行うために必要となる各種試薬や器具、ケラチノサイトを始めとした細胞の培養のための培地、血清、試薬、器具、ショ糖密度勾配遠心分離法などの生化学的解析のための各種試薬類に対して研究費を使用する予定である。また、研究の進展具合に応じて、国内外での学会発表の機会が得られた場合には、その際の旅費等にも使用する予定である。
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