研究課題/領域番号 |
24591635
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
桜井 敏晴 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20101933)
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研究分担者 |
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40424163)
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / センチネルリンパ節 / 免疫病態 / 細胞分子機構 / 免疫抑制 |
研究概要 |
本研究は、マウス・ヒト悪性黒色腫移植マウスモデルを用いた解析、および悪性黒色腫患者センチネルリンパ節(SLN) の免疫染色解析から、悪性黒色腫により誘導されるSLN の免疫病態の誘導機構と免疫病態の解明、および病態改善のための治療標的の探索と改善法の開発を目的とする。本年度は、マウスモデルの作製を主に行った。様々なマウスがん細胞株の、IL10、TGF-βなどの免疫抑制性分子の産生をELISAを用いて評価した。その中で、TGF-βに注目し、本分子がSLNにおける免疫抑制にどのように関与しているかを評価した。まずレンチウイルスベクターにTGF-βのcDNAを組み替えTGF-βを強制発現させるベクターを作製した。次に、TGF-βの産生が比較的低いCT26に感染させTGF-βを恒常的に強制発現させた株(CT26-TGF-β)を作製した。比較対照は、空のレンチウイルスを感染させたCT26-MOCKとした。CT26-TGF-βはCT26-MOCKに対して10倍以上TGF-βを産生した。これらの細胞株をBalb/cマウスの臀部に移植したところ、移植後10-14日後の血清中のTGF-β濃度は、両者間で有意な差を認めなかった。このことより、このマウスモデルはSLNや腫瘍内などの局所ではTGF-βが高濃度になるが、全身的には影響を及ぼさないモデルであることが示唆された。In vitroでの増殖は、CT26-TGF-βがCT26-MOCK に比べ80%程度に抑制されたが、Balb/cマウスに移植すると14日目以降に有意な差を持って増殖亢進が認められた。この増殖亢進は、免疫不全マウスNOD/SCIDに移植した時には認められなかったため、がん細胞の産生するTGF-βは免疫学的機序で腫瘍の増殖を助長していることが示唆された。来年度以降本モデルマウスを用いて、SLNや腫瘍局所の免疫学的解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、さまざまな免疫抑制分子をスクリーニングし、注目する免疫抑制分子をTGF-βに決定することが出来、その強制発現のためのベクターの作製、恒常的に強制発現した細胞株の作製を完成することが出来た。さらに、作製した細胞株をマウスに移植し、何らかの免疫学的作用が明らかに働いていることまで明らかに出来た。来年度以降に本モデルマウスを用いて解析する準備が完全に整った。よっておおむね当初の計画通り進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、本年度構築したマウスモデルを用いて、様々な免疫学的解析をSLN、腫瘍局所を中心として行う。空ベクターを導入した細胞株を移植したマウスのSLN、non-SLN 及び、目的の遺伝子を操作した細胞株を移植したマウスのSLN、non-SLN の計4 種類の LN の免疫状態を比較することになる。この実験により、悪性黒色腫で発現する各種免疫調節分子やシグナル伝達経路がSLN の免疫状態に及ぼす影響を評価できる。評価項目は、樹状細胞、Treg、MDSCなどの数、活性化マーカー、機能を評価する。さらに、腫抗原特異的T 細胞誘導能の評価も行う。平行して、ヒトの悪性黒色腫を用いた解析を行う。具体的には、ヒト悪性黒色腫がん組織とセンチネルリンパ節組織の免疫学的解析、ヌードマウスにヒト悪性黒色腫を移植し、SLNや腫瘍局所の樹状細胞やMDSCの機能評価、機能改善のための治療法の探索を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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