研究課題
本研究は、悪性黒色腫により誘導されるセンチネルリンパ節(SLN) の免疫病態の誘導機構と免疫病態の解明、および病態改善のための治療標的の探索を目的とする。本年度は、悪性黒色腫によるSLNの免疫抑制状態を改善できる薬剤の探索を行った。その結果、チロシンキナーゼ阻害薬A、ホルモン受容体阻害薬Bなどが、in vivoにおいて、その作用を有する可能性が分かった。そのメカニズムを詳しく解析したところ、Aは、悪性黒色腫からの様々な免疫抑制性のサイトカイン産生を抑制でき、これらのサイトカインが流れて行くSLNの免疫抑制環境を改善している可能性が考えられた。具体的には、SLN内の樹状細胞による抗腫瘍T細胞刺激能及び活性化能が、改善されていた。Bに関しては、腫瘍内のマクロファージや線維芽細胞に作用して、腫瘍組織内の免疫環境を改善し、リンパ節での抗腫瘍免疫T細胞応答の増強が起こる可能性が明らかとなった。以上より、チロシンキナーゼ阻害薬Aや、ホルモン受容体阻害薬Bは、悪性黒色腫細胞や、免疫細胞に直接に作用して、SLNの免疫抑制を改善できる可能性が示唆された。 また、これらの薬剤は、抗PD-1抗体などの既存の免疫療法との併用で抗腫瘍効果を増大できる可能性も考えられた。従って、研究期間全体を通じて、目的である悪性黒色腫によるセンチネルリンパ節(SLN) における免疫病態の細胞分子機構が解明され、さらにそれらの免疫抑制状態を改善できる薬剤を複数同定できたことにより病態改善法の臨床応用に期待される研究成果が得られた。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Journal of immunotherapy
巻: 37 ページ: 63-72
10.1097/CJI.0000000000000011