脳や神経は紫外線非曝露組織であるため、XP、CS患者におけるその変性機序は各種XP因子、CS因子が担うヌクレオチド除去修復(NER)の異常のみでは説明できない。そこで今回我々は、皮膚外症状の誘因として、紫外線によるDNAの直接損傷に対する修復(NER)欠損のあるXP、CS患者ではこれまで異常が指摘されなかった酸化的DNA損傷に着目した。塩基除去修復など酸化的DNA損傷の修復システムにも異常が生じ、酸化的DNA損傷が脳神経組織に過剰に蓄積し、その結果様々な表現形を呈するのではないかとの仮説を立て、立証を試みた。これまでXP細胞、CS細胞、CSA/CSBノックダウン細胞はH2O2処理で高感受性であること、XP細胞は酸化的DNA損傷の代表的生成物である8-OHdGの修復に低下がみられることを確認したが、本年度、この感受性亢進、修復力低下は新規患者細胞でも再現性をもってみられ、さらに高感受性はエダラボンなどのフリーラジカルスカベンジャー処理で軽度ではあるが改善する現象が観察できた。これらの結果は、XP細胞、CS細胞は普遍的に酸化ストレスに対して弱く、またその脆弱性は抗酸化処理により部分的に回復することが期待され、XP、CSにおける塩基除去修復システムの機能不全がある可能性と、将来における抗酸化剤を用いた治療法の可能性が示唆された。 我々は昨年までにXPGマウスにおいて、大脳皮質におけるオリゴデンドロサイトの分化異常やミエリン形成に障害がみられることを免疫組織学的に確認していたが、今年度は同マウスの維持が困難で、XPGマウスの分子レベルでの解析は行えなかった。
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