メラニン合成に関与する分子をスクリーニングする過程で、ADAM (a disintegrin and metalloprotease) 阻害剤がメラニン量を抑制することを見出した。この阻害剤はヒトメラノサイトにおいて、メラノソーム構成タンパクであるPMEL17のプロセッシングに関与することを明らかにした。ADAM 阻害剤はPMEL17 のN 末とC 末の切断に影響を与え、メラノソーム内の線維構造に変化をきたした。これまでにPMEL17 の切断に関わるプロテアーゼとして報告されているγ-secretase やbeta-site amyloid precursor protein cleaving enzyme (BACE2) による切断パターンと比較し、ADAM 阻害剤はこれらの分子と独立してPMEL17 のプロセッシングに関与した。これまでにPMEL17 のN 末の切断する分子は見つかっておらず、C 末のプロセッシングに関与する分子はγ-secretase のみが明らかにされている。興味深いことに、アルツハイマー型認知症で蓄積するアミロイドの前駆体であるamyloid precursor protein (APP) もγ-secretase、BACE1、ADAM17 などで切断されることが知られており、共通の切断機構の存在が示唆される。また、我々はこれまでに、diacylglycerolの代謝に関与するdiacylglycerol kinase (DGK)がメラニン合成に関与し、tyrosinase の細胞内輸送やMITF の発現を制御することを明らかにしてきたが、今回、DGK阻害剤がPMEL17の切断に関与することを明らかにした。PMEL17 のプロセッシングには複数の分子が関与する可能性があり、我々の研究は、その切断に関与する新規分子を解明する大きな手掛かりになりうると考える。
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