本研究ではProfilaggrin のN末領域(proFLG-N)が核内に移行した後、どのような機序で細胞死に至るのかを解明することを目的とし、①核内でprofilaggrinのN末端領域と結合しうる蛋白質の同定、②細胞死にいたるシグナル伝達経路を検索、③Caspase14など表皮角化細胞の細胞死と関連が示唆されている分子との相互作用について検討した。 これまでにproFLG-Nが核内に移行しDNAを分解し細胞死を誘導すること、その機能にproFLG-NのA domainが関与していることを見出した。同時に、mesotrypsinにより profilaggrinからproFLG-Nが切断されること、さらにDNAの分解にはcaspase14によりinhibitor of caspase-activated DNase (ICAD)から遊離した Caspase-activated DNase(CAD)も関与していることを明らかにした。この細胞死の分子メカニズムを解明するため、caspase経路を始めとするアポトーシス誘導シグナル経路とproFLG-Nとの関連を検討したところ、この細胞死はpan-caspase阻害薬であるZ-VAD-FMKでは抑制されなかった。現在小胞体ストレスを介する経路など他のシグナル経路との関連を解析している。また分化した表皮角化細胞の核内でproFLG-Nと結合する蛋白質をプロテオミクス解析で検索したところ、その候補蛋白質としてpininが同定され、siRNAによりpininの発現を抑制した細胞ではproFLG-Nによる細胞死の抑制が観察された。 またproFLG-Nの細胞死誘導作用を皮膚有棘細胞癌の治療に発展させるため、この領域を19-20アミノ酸からなるペプチドに分解し細胞死に関与するコア領域の同定を試みたところ、最もN末端に存在するペプチド(1-19アミノ酸;1-19proFLG-N)で細胞死が誘導された。
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