CD22とCD72はB細胞に特異的に発現している表面分子であり、B細胞を抑制的に制御する。本研究ではCD22とCD72を同時に欠損させたマウス(CD22-/-/CD72-/-マウス)を作成し、CD22とCD72がB細胞機能を抑制する上でどのように関与しているかを検討している。本年度は、CD22とCD72の両者が欠損するとより自己免疫疾患を発症しやすくなるかについて、血清中の自己抗体価測定、実験的マウスループスモデルを用いて検討した。3~4ヶ月週齢のマウスでは抗核抗体の出現率はいずれのマウス群間でも差は認めなかったが、1年~1年半週齢の高齢マウスでは、野生型マウスに比べCD22-/-マウスでは抗核抗体の出現率は有意に低下していた。一方、CD72-/-マウスでは野生型マウスと同程度であり、CD22-/-/CD72-/-マウスではCD22-/-マウスと同様、抗核抗体の出現率は野生型マウスに比べ有意に低下していた。次にマウスにプリステンを腹腔内投与してループス類似病態を誘導する実験的マウスループスモデルを作成し、抗核抗体の出現率と腎炎の重症度について検討した。CD22-/-マウスでは野生型マウスに比べて抗核抗体の出現率は有意に低下していが、CD72-/-マウスではCD22-/-マウスに比べ抗核抗体の出現率は上昇していた。しかし、CD22-/-/CD72-/-マウスでは抗核抗体の出現率は野生型マウスと同程度だった。これは高齢マウスで見られた現象と類似していた。腎炎の評価のため尿タンパクを測定したところ、いずれのマウス群間でも差を認めなかった。以上より、これまでの検討と同様、CD22とCD72の両者が欠損してもそれぞれの単独欠損を越える異常は見られなかった。したがって、CD22とCD72は独立してB細胞の機能を制御している可能性が考えられた。
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