研究課題/領域番号 |
24591649
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野村 尚史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60346054)
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キーワード | 皮膚免疫 / 免疫制御 / アレルギー |
研究概要 |
Foxp3陽性制御性T細胞は、免疫寛容を維持するCD4陽性T細胞であり、胸腺型と末梢誘導型の二つのサブセットに分けられる。サブセットを識別する指標は現在のところ不明だが、胸腺型は転写因子Heliosを恒常的に発現する。ただしHeliosは、ある条件では末梢誘導型も発現するためサブセットの厳密なマーカーとはならない。しかしながら、抗原刺激によりHelios陽性制御性T細胞の数が増えることから、Heliosは制御性T細胞の機能と何らかの形で関わっていると想定される。 本研究は、黄色蛍光タンパク「Venus」でHeliosの発現をモニターできるように作成したHeliosレポーターマウスを用いて、Helios陽性制御性T細胞の性質を解析することを目的とする。 平成25年度はハプテンでCHS(contact hypersensitivity)を惹起した皮膚に集積した制御性T細胞を分取し、Helios陽性/陰性間の制御性T細胞の機能を比較した。その結果、Helios陽性分画には、抗原特異的で抑制活性が高い制御性T細胞が濃縮されていることが明らかになった。したがってHelios発現は、ある時点での制御性T細胞の抗原反応性を反映するものと推測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、分取したHelios陽性制御性T細胞をin vivoに養子移入し、生体内での抑制活性を評価する予定だった。しかし回収できる細胞数が予想外に少なく、生体内での機能を評価しきれなかった。より多くの細胞を分取する方法を工夫するか、少ない細胞で評価できるモデルを工夫する必要がある。その理由からプロジェクトに若干の遅れがあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、Heliosの発現が、制御性T細胞が抗原を認識した状態と関係することが明らかになった。しかし通常のT細胞を抗CD3抗体で刺激してもHeliosは発現しない。したがって、Heliosの発現は(T細胞抗原受容体シグナルの活性化ではなく)制御性T細胞に特有の、ある状態を反映している可能性がある。 今後は、他研究室との共同研究を通して、Helios陽性制御性T細胞の遺伝子発現プロファイルやクロマチン状態を解析する予定である。またHelios陽性制御性T細胞が誘導される条件、あるいは誘導が抑制される条件を、接触皮膚炎モデルを用いて探索する。さらに、少数のHelios陽性制御性T細胞で、その免疫抑制活性を評価できるin vitro実験系を考案する予定である。
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