Foxp3陽性制御性T細胞(Treg)は免疫寛容を維持するT細胞である。胸腺内で分化する胸腺型Tregと、末梢リンパ組織で通常のT細胞から分化する末梢誘導型Tregの少なくとも二つのサブセットが認知されている。しかし各サブセットを識別できる細胞表面マーカーがなく、簡便な解析手段がなかった。そこで本研究では、胸腺型Tregが恒常的に発現する転写因子Heliosを蛍光タンパクで可視化したマウスを開発し、生きたHelios(+)Tregの性質を解析した。今年度も継続して、CHS(contact hypersensitivity)を惹起した皮膚・所属リンパ節のTregをFACSで分取し、抑制活性を解析した。その結果幾つかの興味深い知見をえられた。(1)Helios(+)Treg分画は、CHS感作抗原に特異的なT細胞が濃縮されていた。(2)Helios(+)Treg分画はHelios(-)分画よりも強い抑制活性を発揮した。(3)Helios(+)Tregは共存する通常T細胞のIL-17産生をより効率的に抑制したが、IFN-γ産生抑制能についてはサブセット間の違いはなかった。このようなTregサブセット間の違いが、実際の免疫疾患や癌免疫においてどのような働きをしているかは今後の課題である。Heliosは、胸腺型Treg以外に、末梢誘導型Tregの一部・通常T細胞の一部・NK細胞・神経細胞の一部にも発現する。本研究で開発したHelios可視化マウスはこれらの細胞の機能を解析する上でも非常に有用である。
|