アトピー性皮膚炎を代表疾患とする湿疹・皮膚炎は皮膚科を受診する患者の約40%を占める最も頻度の高い疾患である。またアトピー性皮膚炎は40歳以下における有症率が約10%と生産年齢における罹患率が非常に高い国民的疾患といえる。しかしアトピー性皮膚炎治療の薬物療法の中心であるステロイド・免疫抑制剤外用療法には無視できない特有の副作用があり、多く患者の症状のコントロールが不十分でQOLが損なわれている。我々は以前にチオレドキシン(TRX)を過剰発現させたTRXトランスジェニックマウスで接触過敏(CHS)反応やクロトンオイル皮膚炎反応が抑制される事、ヒトリコンビナントTRX(hrTRX)腹腔内投与によりこれらの皮膚炎反応が抑制される事を報告してきた。当院の倫理委員会で承認をえて、hrTRX含有試験品およびチオレドキシンを含まない対照基剤のパッチテストを10名のボランティアに施行し、アレルギー反応や刺激反応は全例で認められなかったことを確認した。 hrTRX含有クリーム、ゲルとプラセボクリーム、ゲルを軽症から中等症の20名のアトピー性皮膚炎患者の前腕、大腿にそれぞれ左右に外用して皮膚臨床症状、自覚症状、角層中の炎症性サイトカインについて観察、測定した。当該臨床試験はダブルブラインド・プラセボコントロール・ランダマイズド試験としてデザインを組んだ。経過中に1名の患者が元来あったアトピー性皮膚炎が増悪したため試験を中断されたが、残りの19名は副作用や有害事象を生じずに外用試験を完了した。当該データは、ブラインドをオープンとして現在解析中である。
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