研究課題
EBウイルス(EBV)関連T/NKリンパ球増殖症の病態解明を研究課題として、次の研究計画に従い研究を行った。1)EBV感染リンパ球サブセット解析:各病型に関連するEBV感染リンパ球サブセットを末梢血および皮膚病変において調べた。種痘様水疱症では、若年発症の古典的症例ではEBV感染γδT細胞数が増加しているが、成人や高齢発症例ではαβT細胞の症例が多かった。蚊刺過敏症はEBV感染NK細胞増多症を伴っていた。2)EBV感染細胞株樹立と解析:EBV感染αβT/NK細胞は比較的容易に樹立でき、細胞の遺伝子発現と機能解析が可能だが、IL2、IL18とビスホスフォネートを用いる培養系は樹立できたものの、γδT細胞細胞株の樹立は成功していない。3)EBVのγδT細胞への感染実験とEBV遺伝子発現解析: T細胞受容体γδ遺伝子再構成解析法とEBV遺伝子発現を進め、特に重症な臨床症状や予後不良因子と思われるBZLF-1(再活性化マーカー)の発現を中心に解析を進めた。4)臨床病型と予後因子解析:種痘様水疱症における粘膜・眼症状の特徴を報告した。古典的および全身性種痘様水疱症と蚊刺過敏症の診断基準を設定し、予後解析を実施した。古典的種痘様水疱症の予後は他群と比べて良好であった。予後不良因子は、9歳以上の発症と、BZLF1 mRNAの2因子であった(Miyake T et al. 論文準備中)。EBV DNA量やリンパ球サブセットは予後因子ではなかった。高齢発症のEBV関連T/NKリンパ球増殖症には、鼻型NK細胞リンパ腫のほかに、種痘様水疱症類似の皮疹をとる一群が存在することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度研究成果のうち、臨床予後解析に関する論文を仕上げ、投稿中である。EBV関連T/NKリンパ増殖症に関するCPCを開催し、高齢発症群の臨床および細胞学的特徴を解析することができ、会議録としてまとめた(Hamada T, -- Iwatsuki K et al, J Dermatol 2014; 41: 40-42)。患者末梢血および皮膚病変におけるEBV感染リンパ球サブセットとウイルス遺伝子発現解析を進めることができ、種痘様水疱症と蚊刺過敏症の発症に関連するリンパ球サブセットが、それぞれγδT細胞とNK細胞であることを明確にすることができた。加えて、成人および高齢者発症の種痘様水疱症様皮疹をとる症例ではαβT細胞のことが多いことも見出した。ウイルス遺伝子解析は進めているが、血液検体からのγδT細胞株樹立と、感染実験に関する研究が遅れている。
継続性と集積が必要な4研究テーマを次年度も実施する:1)患者末梢血および皮膚病変におけるEBV感染リンパ球サブセット解析、2)EBV感染γδT細胞、NK細胞培養と細胞株樹立・解析、3)EBVのγδT細胞への感染実験とEBV遺伝子発現解析、4)予後因子解析。われわれはEBV感染NK細胞株がPMAとTNFαにて再活性化シグナルBZLF1mRNAが発現することをすでに報告しており、症例集積研究においても、再活性化に関与するBZLF1mRNA発現が予後因子としても重要であることを見出した。すなわち、EBV再活性化が重症な臨床症状や生命予後と深く関連していることので、末梢血と皮膚病変を比較して、BZLF1とその下流のシグナル(BRDF)発現を解析する。発症にかかわる細胞障害性T細胞による免疫応答や、血球貪食症候群の機序に言及できるものと思われる。感染実験は、CD34陽性細胞などの検体を採取することが難しいので、PHA誘導幼若化Tリンパ球(一部にCD34陽性)を用いて実施し、EBV感染細胞のクローン解析と表面形質解析に方向転換して、EBV感染細胞の多様性と分化度を調べることを予定している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
J Dermatol
巻: 41 ページ: 43-49
doi: 10.1111/1346-8138.12346.
巻: 41 ページ: 40-42
doi: 10.1111/1346-8138.12373.
巻: 41 ページ: 3-10
doi: 10.1111/1346-8138.12299.
巻: 41 ページ: 360-362
doi: 10.1111/1346-8138.12446.
巻: 40 ページ: 487-488
doi: 10.1111/1346-8138.12144.