研究課題/領域番号 |
24591655
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
白方 裕司 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50226320)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 尋常性乾癬 / シグナル伝達 / IL22 / STAT3 / Bcl3 / 角化細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、乾癬発症機序におけるTh17, IL22, IL23~STAT3, その下流におけるシグナル伝達を詳細に解析し、新たな乾癬の治療薬開発につなげることである。 本年度は正常ヒト角化細胞を用いたin vitro系でのシグナル伝達について検討した。当教室にて保存している数種類の表皮角化細胞を無血清培養にて培養し実験に用いた。 IL-22刺激によるSTAT3経路シグナルの活性化:無血清培養にて培養した角化細胞にリコンビナントIL-22を添加し、経時的にサンプルを回収しSTAT3のリン酸化をウェスタンブロットにて、Bcl3の発現誘導をreal time PCRにて解析したところ、STAT3, Bcl3ともに発現が増強した。 IL-22添加24時間前にSTAT3ドミナントネガティブ遺伝子変異体をアデノウィルスベクターを用いて導入し、STAT3の機能をあらかじめ抑制しておいた条件下にてIL-22を添加し、経時的にサンプルを回収し、Bcl3の発現をreal time PCRにて解析したところ、Bcl3の発現誘導は抑制された。 IL-22によるBcl3とp50の核移行についての検討:IL-22刺激によりBcl3, p50が核移行するかについて、①刺激後経時的に核分画をサンプリングし、ウェスタンブロットにて検討し、②抗Bcl3抗体、抗p50抗体を用いて免疫染色を行い、共焦点laser顕微鏡にて観察した。IL22刺激ではBcl3, p50とも蛋白発現が増強し、さらに両者とも核内へ移行した。以上の所見から臨床的に重要とされているIL22系のシグナル伝達が、角化細胞内ではSTAT3, Bcl3, p50の経路でシグナルを核内へ伝達していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究計画では、表皮角化細胞を用いたIL22のシグナル伝達系の解析を行うことであり、角化細胞を用いたシグナル伝達が実際にSTAT3を活性化し、さらにBcl3, p50の分子が活性化されることを見いだした。またSTAT3のドミナントネガティブ変異体を導入した細胞ではBcl3, p50の活性化が抑制されることを確認し、Bcl3, p50のIL22による誘導がSTAT3のみを介していることが明らかとなった。 本年度の成果は当初の計画どおりに進んでおりおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度はIL-22刺激によりBcl3が誘導され、IL-22刺激によりBcl3, p50が活性化され、核内へ移行することについて免疫染色、ウェスタンブロットにて証明した。またこれらの検討によりIL-22-STAT3- Bcl3/p50のシグナル伝達系が重要な働きをしていることが示唆された。今後の方針としてIL22刺激によりSTAT3がリン酸化されるため、STAT3により遺伝子誘導されるHB-EGF, IL-8, S100A7, HBD2について発現が誘導されるかreal time PCRにて確認する。またこの経路について、アデノウィルスベクターやsiRNAを用いてSTAT3の抑制系 、Bcl3の強制発現系、抑制系について解析する。最終的にはBcl3ノックアウト角化細胞を用いて再確認する。また、乾癬病変部におけるBcl3, p50の関与について免疫染色にて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
角化細胞培養用の試薬やプラスチック器具等に20万円程度、蛋白発現、遺伝子発現確認用の試薬などに約30万円、成果発表並びに情報収集旅費として約40万円を計上の予定である。
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