研究課題/領域番号 |
24591667
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中野 信浩 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30420839)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アレルギー / マスト細胞 / Notch |
研究概要 |
平成24年度は、マスト細胞表面上に発現するNotch受容体を介したシグナルが、マスト細胞のサイトカイン産生を増強するメカニズムについて主に解析を行った。 Notchリガンドでプライミングされたマウスマスト細胞は、IgE受容体の架橋刺激によって誘導されるTh2サイトカイン及び炎症性サイトカインの産生が増強される。IgE受容体の発現量に変化がないことから、細胞内のシグナル伝達系に焦点を当てた解析を行い、IgE受容体架橋刺激により誘導されるMAPキナーゼの活性化が亢進していることを見いだした。また、NotchシグナルがMAPキナーゼの活性化を亢進させる機序として、マスト細胞の活性化を負に制御する因子SHIP-1の発現量低下が寄与していることを示した。さらに、NotchシグナルはTh2サイトカインの一つであるIL-4の発現を顕著に増強させることから、Il4遺伝子発現制御領域欠損マウス由来マスト細胞を用いて解析を行った。その結果、NotchシグナルはCNS2と呼ばれる発現制御領域を介してIL-4発現を増強することが明らかになった。 本年度の研究により、NotchシグナルはSHIP-1の発現量低下を介してIgE受容体架橋刺激によって誘導されるサイトカイン産生を全体的に増強するとともに、Il4遺伝子のCNS2領域を介してIL-4産生を顕著に増強する機序が明らかになった。これらの結果は、γ-secretase阻害剤などを用いたNotchシグナルの遮断がマスト細胞依存的なアレルギー反応の低減に有効である可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、Notchシグナルがマスト細胞のサイトカイン産生を増強させるメカニズムの解析がほぼ終了、論文原稿も作成済みであり投稿準備の段階であることから、本研究に関しては順調に進展していると考えている。 また平成24年度には、Notchシグナルが粘膜型マスト細胞の分化・成熟を促進させる分子的メカニズムの解明を目指した解析も行った。本研究に関しては「今後の研究の推進方策等」の欄に記したとおり、一部研究計画を変更したため当初の予定よりも進行が遅れている。しかし、問題点はほぼ解決できており、新たな発見を加え研究成果を論文にまとめることができると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、Notchシグナルが粘膜型マスト細胞の成熟を示す複数のマーカー分子の発現を顕著に増加させることを明らかにしている。さらにNotchシグナルが細胞内pHの調節に関与する分子Tescalcinの発現を増加させることも見いだした。粘膜型マスト細胞の成熟に関わる分子的機序についての知見はきわめて少ないため、平成24年度の研究ではTescalcinに焦点を当てた成熟機序の解析を試みた。しかしながら、Tescalcinの機能を阻害したとき本分子の機能を代替する分子が複数存在することが判明し、Notchシグナルが誘導する粘膜型マスト細胞の成熟をTescalcinの機能から解明していくことは難しいと判断した。幸いなことに粘膜型マスト細胞成熟に重要と思われる有力な候補分子をいくつか見いだすことができたため、今後これらの分子に焦点を当てた解析を行っていく。 また、平成25年度以降に実施予定の研究では、アレルギー炎症マウスモデルを用いてマスト細胞がヘルパーT細胞に抗原提示をする生理的意義を解明することを目指している。これまでに、Notchシグナルがマスト細胞にMHC class IIの発現を誘導し、抗原提示細胞としての機能を付与することを明らかにしている。本研究では、MHC class II欠損マウスの骨髄細胞から分化・誘導させたマスト細胞をマスト細胞欠損マウスに移植することで、マスト細胞のMHC class IIのみが欠損したマウスを作成する。本マウスに食物アレルギーを誘導する実験系を用いて、マスト細胞の抗原提示機能を解析する。すでにマウスモデルの作成と実験系の構築が完了しており、予備的な実験で良好な結果が得られていることから、当初の計画通りに研究を遂行していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類の購入により当該年度の所要額を超過してしまう恐れがあった。また、予算消化のためのさほど必要でない物品購入を避けたため、17,898円の次年度使用額が生じた。当該助成金は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、必要な試薬類や実験動物の購入、及び論文投稿料や研究成果発表のための交通費などに使用する。
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