平成26年度は、平成25年度に雑誌へ投稿した論文のリバイス実験を行い、本論文はJournal of Immunology誌に受理された。本論文において、マウスマスト細胞表面に発現する受容体Notch1及びNotch2を介したシグナルがIl4遺伝子のCNS2エンハンサー領域に作用し、IgE受容体FcεRIの架橋刺激によって誘導されるIL-4産生を顕著に増強させることを明らかにした。また、Notch2を介したシグナルはFcεRIシグナルの負の制御因子SHIP-1の発現量を低下させ、FcεRIの架橋刺激を細胞内に伝えるMAPキナーゼの活性化を増強することでTh2サイトカイン産生を全体的に底上げすることも明らかにした。本研究により、アレルギー反応時のマスト細胞によるTh2サイトカイン産生にNotchシグナルが関与していること、及びその分子機構が明らかとなった。 また、Notchシグナルが粘膜型マスト細胞の発生にも関与していることを見出したことから、Notchシグナルの阻害がアレルギー疾患の病態に与える影響について解析を行った。卵白アルブミン (OVA) に対する食物アレルギーマウスモデルを作製し、Notchシグナル阻害剤DAPT投与の効果を検討した結果、アレルギー反応に伴って誘発される下痢及び腸管粘膜へのマスト細胞の集積がDAPT投与により有意に抑制されることを明らかにした。 これらの研究成果から、マスト細胞におけるNotchシグナルがアレルギー疾患治療のターゲットになりうることが示唆された。
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