研究課題/領域番号 |
24591669
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
長田 真一 日本医科大学, 医学部, 助教 (00244484)
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キーワード | 細胞極性 / プロテインキナーゼC / 毛包形成 / 皮膚幹細胞 / 創傷治癒 / 皮膚発癌 |
研究概要 |
哺乳類の上皮細胞の頂端基底極性 (apical-basal polarity) の形成には、進化的に保存された aPKC (atypical protein kinase C)-PAR (partition defective) システムが重要な役割を果たしている。aPKC-PAR システムを構成する分子の一つ、aPKCλ(lamda)を表皮基底細胞特異的に欠損させたマウスを作製したところ、変異マウスは脱毛をきたし、表皮が肥厚した。本研究は、これらの異常に皮膚幹細胞が関わっているのではないかと考え、aPKCλによる皮膚幹細胞の維持機構を解明すべく解析を行っている。 脱毛のメカニズムを調べるためにに以下の実験を行った。①昨年度に解析した毛嚢バルジ幹細胞のマーカーに加え、新たにLgr5、P-cadherin、keratin 6、Lrig1、S100A6などのマーカーの発現を野生型と変異マウスで比較した。②毛嚢バルジ幹細胞はCD34とintegrin α6が共陽性となる。野生型、変異マウスそれぞれの表皮を酵素処理して単細胞化した後、フローサイトメトリーでCD34とintegrin α6で共陽性となる毛嚢幹細胞の数を比較した。③細胞極性のマーカーを用いて、変異マウスの表皮細胞で細胞極性が変化しているか調べた。以上の結果から、aPKCλ表皮欠損マウスでは毛嚢バルジ幹細胞が減少していることが明らかになった。このことは、aPKCλが毛嚢バルジ幹細胞の維持に必要な因子であることを意味している。 表皮が肥厚するメカニズムについては、創傷治癒、および発癌に関する予備的実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞極性制御因子aPKCλを表皮特異的に欠損させたマウスで脱毛をきたすメカニズムを、毛嚢バルジ幹細胞の観点から明らかにするという課題については、予定していた実験がほぼ終了し、現在これまでの結果をまとめる論文を作成中である。また、創傷治癒、および発癌実験についてもパイロット実験が終了した。
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今後の研究の推進方策 |
創傷治癒、および発癌実験はマウスの数を多くして、これまでの結果の再現性をみる実験を行う。また、正常マウスに比べ、aPKCλ欠損マウスの皮膚で発現が増減している遺伝子をスクリーニングし、皮膚幹細胞の維持に関わる新たな因子を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額は57円と小額であり、申請した予算どおりに計画が進んでいると考えている。 マウスの管理飼育費や研究遂行上に必要な試薬類、消耗品の購入に充てる。また、次年度は本研究計画の最終年度にあたるので、投稿論文の英文校正、国内外での学会発表の旅費に充てる予定である。
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