研究課題
基盤研究(C)
1. 患者抽出・臨床型別分類:茶のしずく石鹸小麦アレルギーの発症を疑い当科を受診した184例の患者を対象とした。特異IgE抗体価測定、グルパール19S溶液による皮膚プリックテストを施行した。その結果、特異IgE抗体価については、グルテン、小麦の陽性率が高く、グルテン>小麦の関係にあり、ω-5グリアジンはほぼ全例で陰性であった。皮膚プリックテストは、症状が重篤であるほど低濃度のグルパール19S溶液で陽性反応を呈する傾向が見られた。2.ドットブロット法およびELISA法による精度の高い(in vitro)診断法の確立:本疾患確実例の数例のグルパール19Sに対する血清中IgE抗体の存在をドットブロットにて評価したところ、特異IgE抗体の存在が認められた。そこで、定量性、スループット性の向上を図り、検体数を増やしてELISA法を用いた評価系の構築を試みた。その結果、血清濃度、抗体濃度、抗原濃度、等、本疾患確実例を的確に判定できる試験条件の設定、及び、判定基準(陽性・疑陽性・陰性)の設定を完了する事ができた。3. 臨床症状の型および重症度とin vitro診断法結果を比較検討し、より優れた診断法へ:小麦、グルテン、ω-5グリアジンの特異IgE検査結果(Immuno-CAPTM system)、グルパール19S溶液を用いた皮膚プリックテストおよびELISA法の結果について、定性的、定量的な比較を行った。その結果、定性的(陽性、陰性の判定)には、皮膚プリックテストの感度が最も高く、それより僅かに低いもののほぼ同等でELISA、Immuno-CAPTM systemについては症例により陰性と判定される場合がある事が確認された。各検査値(プリックテストについては陽性濃度)と重症度の相関を評価した結果、ELISA法の結果の相関性が最も高かった。
1: 当初の計画以上に進展している
日本アレルギー学会 化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会(2011.10.11)が策定した診断基準(http://www.allergy.go.jp/allergy/flour/index.html)に本研究で対象とした患者を照らし合わせた場合、ELISA法による精度は、感度、特異度、一致率のいずれも90%を超えており、本疾患をこれほど的確に評価できるIn vitro検査法は他に存在しない。当該検査法の利用は既に当科のみの使用に限定しておらず、上記特別委員会に検査依頼のあった全ての検体についても検査対象としており、現時点で累計1500例を超える実績を持っている。また、当科を受診した患者に対しては定期的な検査を実施していることから、H25年度に予定されている予後とELISA値の相関関係についての検討は既に進められている。
当初の計画通り、以下の3項目についての検討を進める。4. 原因抗原の解析 5. 当該石鹸以外の、香粧品に含まれる加水分解コムギ末との交差反応性の検証 6. 患者予後予測因子の探索項目4については検査法の利用価値などを考慮し、まずは当該疾患に共通した抗原の特定を行う。後に、個々の患者について検討を進める事で、重症例となる場合の原因の解明等に繋がると考えられる。項目5についても、まずは当該疾患患者に共通した反応性を評価する予定である。香粧品に使用すべきでない加水分解コムギ末の特定だけでなく、患者個々を比較する事で産生されたIgE抗体のタイプ分類が可能となるかもしれない。項目6については本疾患の一般的な特徴の明確化を初期の目的とする。後に、個々の症例について精査し、抗体価を効率的に減少させる(≒治療)方法についての検討を行う。
上記の通り、ほぼ計画通りに研究は進展していることから、請求する研究費の変更は無い。4. 原因抗原の解析:プロテオミクス解析に必要な消耗品費 5. 当該石鹸以外の、香粧品に含まれる加水分解コムギ末との交差反応性の検証:質量分析、ELISA等に必要な消耗品費 6. 患者予後予測因子の探索:ELISA等に必要な消耗品費当該研究内容の重要性から、積極的な情報開示が重要であると考える。よって、アレルギー学会をはじめ関連学会への参加費用、論文執筆に関する費用、なども必要である。また、症例数の確保がデータの質に大きく影響する事から、他施設との調整、ルーチン業務の施行に関し、研究補助員の人件費も必要である。
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