研究課題/領域番号 |
24591672
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古村 南夫 久留米大学, 医学部, 准教授 (10315070)
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研究分担者 |
橋本 隆 久留米大学, 医学部, 教授 (20129597)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メラニン生成 / メラノサイト / クロマチン免疫沈降法 / シグナル伝達解析 / 次世代シーケンシング |
研究概要 |
1.エクソンマイクロアレイによる遺伝子発現解析をまず試みたが、検出とデータの解析が技術的に難しいことが、一昨年前から知られるようになっており、我々の実験でも、ヒトメラノサイトのcAMP経路の刺激薬や阻害薬による様々な発現変化を確認できたが、アメリカの研究グループの実験結果の解析で得られた、マウスメラノサイトの、いろいろな階層で制御され細胞レベルで特異的に変化するシグナル経路を見出すことは残念ながらできなかった。 2.このため、従来のcDNAオリゴマイクロアレイを用いて、次に従来の手法で解析を行い、DAVIDによるシグナル経路の同定を網羅的に行ったところ、マウスとほぼ同様にWntシグナルや、Notchシグナル、ホメオドメイン転写因子などを介した細胞増殖シグナル経路などに関連した遺伝子の発現変化が認められることが明らかになり、マウス由来のメラノサイトに類似した細胞内シグナルの修飾や変化が確認できた。 3.しかし、活性化されるシグナルと、抑制されるシグナルが、マウスで見られるような、cAMPの刺激と抑制によって全く対称的に相反する方向に動くことが確認できず、マウス由来のメラノサイトではあるが、メラノーマに近いmelan-a細胞と、初代培養で多数の成長因子を加えて培養したヒト皮膚由来の培養メラノサイトの違いのためか、詳細に検討すると、シグナルの反応性が若干異なっていた。これが、種の違いによる相違かどうか、今後の検討が更に必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.何万もの遺伝子が関与するトランスクリプトームの包括的特性を解明する端緒をつかむためには、個々のトランスクリプトームの複雑さの解明が必須であり、いくつかの新しいアプローチの方法を並行させて、活用しながら取り組む必要があることがわかった。さらに、そのアプローチの準備と従来の手法により、期待される結果が大まかに確認できた。 2.24年度は、CAGE法と次世代シークエンサーの手法に代えて、従来のオリゴマイクロアレイの高密度タイプを用いた解析を行い、マウスと類似した変化がヒトのメラノサイトでも起こる可能性が示唆され、その詳細を解明するためにヒトメラノサイトを用いた培養細胞モデルが有用であることがわかった。今後のシグナルネットワーク解明の基盤となる知見が得られた点は評価できると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
1.トランスクリプトーム制御の初段階では、関連遺伝子のプロモーター活性で個々の遺伝子の発現がまず制御されるが、これを解明する研究手法は年々進歩しており、計画を修正、最適化をする必要がある。 2.高分解能ゲノムアプリケーションの大幅な増加により、マウスでの大規模解析を基にしたヒトの結果の比較も可能になった。遺伝子発現プロファイルやプロモーターを特定する新しいアプローチ方法のCAGE法(Cap Analysis Gene Expression)は転写ネットワークの解析とトランスクリプトームの特性を明らかにする有力な手法で、次世代シークエンスと一体の、DeepCAGE解析システムの利用も視野に入れた研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.次世代シーケンシングによる解析は、多検体で時系列の複数解析が必要で、今回の予算内では有意な結果を得ることが難しいと判断し、アウトソーシングの低価格解析が期待される次年度に予算と解析を繰り越した。 2.クロマチン免疫沈降(Chip)と組み合わせた、プロモーターアレイあるいはChip-seqについて準備を始めた。クロマチン免疫沈降法については、一般的な方法でパイロット実験したが、メラノサイトには、高分子化合物のメラニンが多く、抽出の過程でDNAと結合し、クロマチン断片化が不安定で、クロマチンへの転写因子結合の比較には使用できない。そのため、アメリカから導入したマイアミ法の改良により、次年度への繰り越し研究費で実験する予定である。 3.DeepCAGE解析は、CAGEと次世代シーケンサーを一連の流れで最適化して行う方法で、現在当施設でも次世代シーケンサー導入待ちであり、残りの研究費と成果を得るベネフィットを勘案して、この新しい解析法も、次年度予算にて試行する予定である。
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