統合失調症は、病態の解明が急務である。申請者はかつて一卵性双生児統合失調症不一致例リンパ芽球を対象とした研究からアドレノメジュリン(ADM)遺伝子が病態に関与している可能性を示した。本研究では、統合失調症患者及び健常対照について、ADM遺伝子のDNAシークエンスおよびDNAメチル化解析を行い、病態への関与について検討した。 平成24年度は、次世代シーケンサーmiSeq(イルミナ)を用いたターゲッテッドリシークエンスを開始し、患者285例の全コーディング領域についての実験を行った。DNAメチル化解析については、以前患者でのmRNA発現上昇を見出した双生児不一致例二組を対象としたHuman Methylation450(イルミナ)による解析の結果、ADM の19メチル化サイトについて不一致例間でΔβ>0.2のものはなかったため、rare variantの同定を目指した実験をすすめる方針とした。平成25年度、平成26年度は、全コーディング領域シークエンスを引き続きすすめ、総計で統合失調症患者475例、健常対照475例についての実験を終了し、データ解析及び候補変異についてサンガーシークエンスによる確認を行った。 統合失調症患者474例、健常対照475例について、平均depthが20x未満のサンプルを除外し、患者464例、健常対照463例が解析対象となった。非同義置換かつdb132による除外及びPASSによるfilteringを行い、サンガー法による確認を行った結果、変異は健常群1名に1箇所認めたのみであり、本結果からは、ADM遺伝子のコーディング領域の変異が統合失調症病態に関与している可能性は否定的であった。本研究ではコーディング領域での検討を行ったが、プロモーター領域などmRNA発現量に影響を与えうる領域について、今後も検討が必要と考えられた。
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