研究課題/領域番号 |
24591676
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
文東 美紀 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00597221)
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キーワード | 精神疾患 / エピジェネティクス / 死後脳研究 |
研究概要 |
DNAを構成する塩基であるシトシンの修飾型の一つ、5-ハイドロキシメチルシトシン(5-hmc)は、メチル化シトシンが脱メチル化されて未修飾型シトシンに変換する際の中間産物と考えられているが、特有の機能などはまだほとんど分かっていない。5-hmcは脳組織に特に多く存在すると報告されているため、この塩基の動態が精神疾患の病因に関与する可能性があると考え研究を行っている。 まず脳組織内の細胞種による5-hmc動態の相違について基礎データを得るために、健常者の大脳皮質から神経細胞および非神経細胞由来のDNAを抽出し、解析を行っている。5-hmcを検出する方法として、断片化したDNAの5-hmcに糖鎖付加を介してビオチンを付加したのち、アビジンビーズを使用して5-hmcを含むDNA断片を濃縮する手法を採用した。現在、次世代シーケンサーによるデータ取得が終了しており、両細胞群において5-hmcに富むゲノム領域を同定し、その相違について解析を行っている。 また近年、さらに詳細に1塩基レベルで5-hmcの解析を行う方法が開発されてきており、これらも試す価値があると考えている。この新しい方法である酸化バイサルファイトシーケンス法はDNAの酸化処理を行ったのち、バイサルファイトシーケンスを行うことで、シトシン、メチル化シトシン、5-hmcの3種類の修飾型シトシンを区別することが可能になる。健常者小脳から抽出したDNAを使用してパイロット的に試験したところ、特定遺伝子領域において、3種類の修飾型シトシンの定量を行うことができた。将来的にはこれら2つの方法を用いて、患者サンプルの解析を行いたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後使用する予定である2種類の5-hmc検出手法で、健常者脳を用いた予備的な実験でデータの一部を得ることに成功しており、患者サンプルを使用した実験を行う下地が整ったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖付加を使用した5-hmcを含むDNA断片の解析については、すでに得られた健常者の神経細胞・非神経細胞の網羅的データを、さらに詳細に解析していく予定である。 また酸化バイサルファイトシーケンス法に関しては、まず健常者サンプルにおける網羅的なデータの取得を進めていく予定である。 これらの健常者を用いた研究から、今後の患者サンプル解析に有用なノウハウやデータを蓄積したのち、患者死後脳を使用した実験を進める。
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