研究課題
①発症前の不安感受性についての検討: 青年期を対象に、発症以前の状況、広場恐怖の有無などを把握すべく、不安障害の前駆症状について不安感受性に関する項目に関するアンケートを施行した。不安感受性に関する評価は心理検査(NEO-PI-R, TCI, STAI)によって行った。その結果、不安感受性における性差や遺伝的関与を示唆する知見が得られた。②遺伝的因子の関与についての検討: パニック障害の発症に関わる社会心理的因子や発症後の脳内ネットワーク障害(拡散テンソル画像)について代表的な遺伝子多型(COMT Val158Met多型やBDNFval66met多型、シグマ1受容体関連遺伝子、セロトニントランスポーター遺伝子)で検討した。特にパニック発作・初発時の症状とセロトニントランスポーター遺伝子多型の関連など発症時の症状と遺伝子多型との関連を調べた。③社会心理的因子(特にライフイベント)の関与についての検討: 初回発作時の状況(症状、場所、日時など)、発作頻度、回避状況、うつ病評価尺度(SDS)、血液データ、喫煙・飲酒の有無などの初診時データを検討し、パニック障害(パニック発作)に影響する因子について検討した。④発症に係る脳内ネットワーク障害(微細な脳構造異常)・脳機能の変化についての検討: 3.0テスラMRI装置によるdiffusion tensor imaging : DTI(拡散テンソル画像)を用いて患者群と健常者群のサンプリングを継続的に行った。前頭葉の入出力系である前視床放線、鉤状束および下前頭後頭束、前帯状束や後帯状束を関心領域、脳梁膨大部を対照領域として拡散テンソル画像の解析を行い脳内ネットワーク障害(拡散テンソル画像)や前頭葉機能異常(NIRS研究)に影響を与える遺伝的因子を探索した。
2: おおむね順調に進展している
サンプリングが順調に推移しており、健常者で約530例、パニック障害において620例に達している。その各々について不安感受性に関する心理検査や遺伝子解析によるデータの蓄積を行っている。また約40例についてはMRIテンソル画像と遺伝子解析の双方を施行している。
①発症前の不安感受性に関する検討: 青年期を対象に不安障害の前駆症状について不安感受性に関する項目に関する検討を継続し、更に研究協力者には下記の②遺伝的因子の関与についての検討、④脳内ネットワーク障害(微細な脳構造異常)についても研究協力を得るように進めていく。性差や合併症の有無、ライフイベントに代表される心理社会的因子、遺伝的因子(遺伝子多型)による表現型を包括的に解析して、パニック症の病態を解明することを目標とする。②遺伝的因子の関与についての検討: パニック障害の発症に関わる社会心理的因子や発症後の脳内ネットワーク障害(拡散テンソル画像)について代表的な遺伝子多型(ドパミン関連遺伝子多型やセロトニン/トリプトファン関連遺伝子)など検討の対象を拡充する。③社会心理的因子(特にライフイベント)の関与についての検討: また精神疾患簡易構造化面接(MINI)によるDSM-IV診断による合併症状の有無を捉え、自記式の検査であるJARTによる知的機能の評価やP&A尺度(パニック障害・広場恐怖、重症度評価)、NEO-PI-RおよびTCI、STAI、ASI(不安感受性尺度)等の臨床評価を行ってパニック障害の発症・病態経過における脆弱性因子を検討する。なおライフイベントは発症前6カ月と採血前6ヶ月間についてList of Threatening Experiences Questionnaire (LTE-Q, Brugha T et al. 1985)を用いて調査する。④発症に係る脳内ネットワーク障害(微細な脳構造異常)・脳機能の変化についての検討:白質神経束の微細構造の異常と(精神神経系に関係する)複数の遺伝子多型との関連を網羅的に検討する。
当初予定していた疾患群の脳画像データのサンプル数を確保するための収集期間が延びたことにより、当初の予定を変更して遺伝子・環境相互作用に関する解析を期間内に行った。
従来計画していた脳機能画像解析の施行と学会等での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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