研究課題/領域番号 |
24591680
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 由華 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20448062)
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研究分担者 |
山森 英長 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90570250)
梅田 知美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00625329)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 神経科学 / ゲノム / 遺伝子 / 生物学的精神医学 |
研究概要 |
統合失調症リスク遺伝子NRGNは、ヨーロッパ系白人に対象者を絞った統合失調症の大規模な全ゲノム関連解析(GWAS)により見出された遺伝子である。これまでに、日本人におけるNRGN遺伝子と統合失調症の関連の報告はない。そのため、統合失調患者2019名と健常対象者2574名の日本人サンプルにおいてNRGN遺伝子と統合失調症の関連について検討した。統合失調症リスク遺伝子NRGNのGWASで見出された遺伝子多型を含むrs12807809-rs12278912ハプロタイプが、日本人において統合失調症と関連していることを見出した。さらに、このリスクハプロタイプの遺伝子発現に対する影響を、統合失調患者42名と健常対象者44名のリンパ芽球細胞を用いて検討したところ、統合失調症のリスクとなるTG ハプロタイプが、TAハプロタイプより、NRGNの発現が低い事を見出した(Ohi et al., Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2012)。 これまでに、NRGN遺伝子は統合失調症患者の死後脳において、健常者と比較して前頭前野[Brodmann (BA) 9、32野]でその免疫活性が低いことが報告されている。そこで、次にGWASにより見出されたNRGNリスク多型の機能を検討するため、統合失調患者99名と健常対象者263名において、NRGNリスク多型が統合失調症の中間表現型である灰白質および白質容積のような脳構造に及ぼす影響をvoxel-based morphometry (VBM) 解析を用いて検討した。その結果、統合失調症患者でのみリスク多型が前帯状皮質の灰白質の体積(BA32)と関連する事を見出し、報告している(Ohi et al., PLos ONE 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、統合失調症の全ゲノム関連解析(GWAS)で同定されたNRGN遺伝子多型について、そのNRGN遺伝子多型の機能はまだよく分かっていないため、日本人におけるNRGNと統合失調症の関連、さらに、そのリスク多型の遺伝子発現やスプライシングに対する影響や、統合失調症にて障害される認知機能、脳構造、神経生理機能との関連についての検討を行うことである。 まず、統合失調患者2019名と健常対象者2574名の日本人サンプルにおいて、NRGN遺伝子をカバーする遺伝子多型(Tag SNP)を用いて日本人における統合失調症とNRGN遺伝子の関連を検討し、リスク多型の同定を試みた。その結果、GWASで見出された遺伝子多型を含むrs12807809-rs12278912ハプロタイプが、日本人において統合失調症と関連していることを同定した。さらに、統合失調患者42名と健常対象者44名のリンパ芽球細胞を用いて、NRGN遺伝子発現量を測定しリスクハプロタイプの遺伝子発現に対する影響を検討した。その結果、統合失調症のリスクとなるTGハプロタイプが、TAハプロタイプよりNRGNの発現が低い事よりこのハプロタイプのが遺伝子発現に関わっていることを見出した(Ohi et al., Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2012)。 次に、リスク多型の機能を検討するため、統合失調患者99名と健常対象者263名において、NRGNリスク多型が統合失調症の中間表現型である脳構造に及ぼす影響を検討した。その結果、統合失調症患者でのみリスク多型が前帯状皮質の灰白質の体積と関連する事を見出した(Ohi et al., PLos ONE 2012)。以上より、本研究はここまで計画通り遂行できているため、引き続きNRGNに着目して、統合失調症の分子遺伝学的基盤を明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様に、既に確立された体制により効果的、効率的に健常対照群および患者群のリクルートを継続して行っていく。さらに収集したサンプルを追加した大規模サンプルにてNRGN発現量や中間表現型との関連について比較検討を進める。我々が包括的遺伝解析研究として発足した脳表現型の分子メカニズム研究会にて、成果発表をする。また、日本生物学的精神学会、日本神経科学学会だけでなく国内外の学会においても常時成果発表や研究の打ち合わせをしていく。さらに新聞発表などのマスメディア、インターネットなどのアウトリーチにて研究成果を社会・国民に発信していく。 近年、NRGNを見出したGWASに引き続き、多数のサンプルを用いたGWASにより統合失調症と関連するいくつかの遺伝子多型が同定されている(ZNF804A、MIR137、TCF4、CSMD1、CNNM2など)。また、遺伝子発現調節に関わるmicroRNAが統合失調症の病態に関与しているという報告がいくつかある。そのmicroRNAの1つであるMIR137遺伝子多型がGWASで見出され、MIR137の結合するターゲーット領域としてこれまでにGWASで見出された遺伝子多型領域が含まれることが分かってきた。このように、これまで個々に考えられていた遺伝子多型が、分子メカニズムの面でいくつかに収束する可能性がある。そこで、NRGN遺伝子リスク多型とGWASにおいて既に報告のある他の遺伝子多型との相互作用を検討する。遺伝子多型間の相互作用は、これまでにリクルートしたサンプルを用いて、統合失調症患者と健常者間に与える効果、中間表現型に与える効果、統合失調症と健常者の死後脳サンプルやリンパ芽球サンプルにおけるNRGN遺伝子発現あるいはその他の遺伝子発現量に与える影響などを検討することにより、統合失調症の分子遺伝学的基盤から病態メカニズムを明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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