研究課題
基盤研究(C)
気分障害におけるG蛋白質機能を介した脳内情報伝達系(セカンドメッセンジャー系)不均衡仮説を臨床的に実証するため、内在性神経幹細胞を活性化する3系統の薬剤を気分障害(うつ病)患者に投与し、その臨床効果を明らかにする。同時に気分障害の診断・治療予測に関連する生物学的マーカーの検索及び基礎的実験として神経幹細胞における各薬剤の反応の違いを比較検討することを目的に研究を実施した。本年度は神経幹細胞に向精神薬の効果を確認するためADHDに広く用い入れられ治療抵抗性うつに有効なメチルフェニデート(MPH)について、胎生マウスの海馬培養細胞より神経幹細胞を単離し、Lab-tek chamber slideに細胞を播種させ4日間メチルフェニデート存在化で増殖・分化能を存在下、非存在下で比較検討した。臨床血中濃度であるMPH 1-10nMにおいては幼若神経細胞が増加し、100nMの高濃度では減弱した。一方、どの濃度においてもグリア細胞の分化には影響せず、増殖に関してはBrdu陽性細胞はすべての濃度において減少していた。上記の結果はMPH治療濃度においては神経細胞の分化は促進し、高濃度では抑制し、グリアへの分化には影響が少なかった。増殖能に関しては抑制的であることを示唆している。現在うつ病患者の症例を組み入れ臨床薬理学的に検討しているが一連の症例からは、気分障害に有効な修正型通電療法が変性疾患であるハンチントン舞踏病の臨床症状を劇的に改善させたことを報告した。このことは精神疾患の病因の背景に緩やかな神経細胞の変性、すなわち内在性の神経幹細胞の代謝が深く関連していることを示唆していると考えられ、これらの結果は精神疾患、特に気分障害の難治化のプロセスに内在性神経幹細胞の分化・増殖能といった神経細胞代謝が深く関り、ここを作用点とした薬剤が新規気分障害治療薬としての可能性を有していると推察された。
2: おおむね順調に進展している
基礎的研究は計画的に進行しているが、臨床研究は患者のリクルートがやや遅延している。
研究計画当初の方針で進行する予定である
研究計画当初の方針で進行する使用する予定である
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Journal of Neurology
巻: 1巻 ページ: 312-314
Journal Hum Genet
巻: 57巻 ページ: 338-341
日本精神神経学会特別号
巻: 特別号 ページ: 41