研究概要 |
1)ペントバルビタール麻酔下,脳定位 的に6-hydroxydopamine(6-OHDA)を一側の内側前脳束へ微量注入することにより,中脳ドパミン(DA)神経を化学破壊した6-OHDAラット(ヘミ・パーキンソン病モデルラット)を作製した。 2)ラット胎仔中脳DA細胞移植による行動及び転写調節因子(c-Fos,FosB)発現の観察:6-OHDAラットの中から移植群を選び,破壊側線条 体に胎仔中脳DA細胞の移植を行った。その後,破壊群・移植群について前記した回転運動の観察を行い,移植による代償および機能的 亢進を調べた。Methamphetamine誘起回転運動観察後 ,ペントバルビタールによる深麻酔下,ラット脳を灌流固定した。取り出された脳は,後固定後,ミクロトーム により凍結切片とし,その後は浮遊法で免疫組織化学法(ABC法)を施行した(Ishida et al, Synapse, 2002)。 3)L-DOPA単回及び反復投与に伴う転写調節因子発現の観察:前記2)の破壊群・移植群のなかからL-DOPA単回 投与群と反復投与群を抽 出した。単回投与群の動物には1回のみのL-DOPA投与,反復投与群の動物には3週間連日のL-DOPA投与を行い,いずれの群もL-DOPA最終 投与2時間後に,ペントバルビタールによる深麻酔下,ラット脳を灌流固定し免疫染色に供した。なお,この実験では,L-DOPA反復投与に伴う回転運動・不随意運動を観察する目的で,L-DOPA投与初日,1週後,2週後,最終日に,各ラットのL-DOPA投与後1時間の行動観察を施行した 。以上の手法により,ラット大脳基底核その他の脳部位に関してc-Fos,及びFosB陽性細胞の分布を調べ,それぞれについて発現の部位特異性,L-DOPA 反復投与に伴う免疫陽性細胞数の変化を観察した(論文作成中)。 4)上記1)~3)の研究と関連して,胎仔中脳DA細胞の線条体への移植により,6-OHDAラットに生じた痛覚過敏が改善することを明らかにした(論文印刷中)。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに行った破壊・移植実験,行動観察及び免疫組織化学法を用いた形態学的研究に 加え,以下の薬理学的実験を行う。 siRNAによる転写調節因子発現抑制の確認と行動観察: 近年,研究分担者の西森らが確立した手法(Kaneda et al, Mol Ther, 2002; Naono-Nakayama et al, Eur J Pharmacol, 2011)を用い,in vivoにおいて転写調節因子発現が抑制されることを確認する。まず,外注して作成した3種類の転写調節因子遺伝子(c-fos,fosB)の何れかに対するsiRNAをHVJ-Eに封入しsiRNA溶液とし,ラットの片側の線条体に注入する。siRNA溶液注入は,ハロセン麻酔下,マイクロインフュージョンポンプを用いて施行する。反対側の線条体には,同時に溶媒のみ注入する。siRNA溶液注入後,一定時間の後,ラット腹腔内にmethamphetamine(3 mg/kg)を投与し,その後1~2時間,回転運動その他の不随 意運動を観察する。行動観察後,ラット脳を採取し,ウエスタンブロットあるいは免疫組織化学法を用い,methamphetamine投与により発現する転写調節因子が,線条体内のsiRNA注入部位で抑制されることを確認する。本実験により,各転写調節因子発現の抑制と回転運動その他の行動との関連性を検討することが可能となる。ウエスタンブロット及び免疫組織化学法の結果の解析(免疫反応性の定量化 ) には,画像解析ソフトを搭載したパソコンを用いる。
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