研究課題
基盤研究(C)
本研究では、認知症の代表であるアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症を血漿バイオマーカーによって客観的で簡便な診断に結びつけることを目指している。すでに我々が明らかにした候補マーカーの有用性を検討するために、約250名の認知症患者と約300名の健常高齢者から血液サンプルを得ている。ヒト血液の採取の際には、札幌医科大学臨床研究審査委員会の審査を受け承認を得た。これまで、候補マーカーとしてアネキシンA5注目してきた。アネキシンA5については、経時的な変化を調べるために、患者16人の血液を年1回、3年間にわたって得た。この血液サンプルでアネキシンA5を測定した結果、ADの進行程度と血中アネキシンA5濃度の相関は認められなかった。従って、アネキシンA5はAD発症早期に上昇する可能性が示唆される。さらに、新規マーカーとしてMilk Fat Globular Protein EGF-8(MFG-E8)を得ている。臨床症状を有し、NINCDS-ADRDAの診断基準を満たし、MRIもしくはSPECTで確認された患者AD20名、一方、コントロール群は地域在住健常高齢者20名の血液を用いて、血漿MFG-E8の濃度を購入したELISAキットで測定した。MFG-E8の血漿濃度はAD患者群でより高値を示し、MFG-E8が血漿バイオマーカーである可能性が示唆された。しかし、この結果は限定された人数での解析であるため、より多くの検体数を解析する必要がある。更に、マウスADモデル動物(Tg2576)を用いて、抗MFG-E8による脳標本の蛍光免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、MFG-E8はAβペプチドの蓄積のある老人斑のAβプラークの大小に関わらずその内部に染まる像が得られ、特徴的な局在があるものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
認知症(特に、アルツハイマー病(AD))の血漿候補マーカーアネキシンA5について、患者血漿を経時的に採取し、その変化を検討することによって血漿に出現するタイミングを推測できる結果であった。このことは、適当な病態進行時期を本マーカーで探ることが可能なものと考えられ、マーカーの使用を考える上で重要であることが示され、バイオマーカーとしての有用性が言える。一方、疾患特異性についての検討が不十分で、今後の課題となった。新規マーカー(MFG-E8)については、血漿マーカーとしての有用性が示唆された段階にとどまっているため、更なる検討が必要である。また、モデル動物の脳を用いた検討で、細胞外にあるMFG-E8が老人班に局在し、その核を形成する可能性が示されていることから、その生物学的性質の解明が重要と思われる。
候補マーカーについて生物学的意義、マーカーが変化するタイミング(病態の進行)をより深く検討し、統計的解析を加えてより精度の高い方法を模索する。また、地域の高齢者コホートを利用した血漿バイオマーカーのバリデーション体制を確立し、候補マーカーと既存診断を比較することで、真正性検証を行なっていく。
該当なし。
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