研究課題
ノルエピネフリン神経伝達系はうつ病の病態に密接に関連しており、脳内ノルエピネフリントランスポーター(NET)は抗うつ薬の重要な標的の一つである。本研究では抗うつ薬を服用していないうつ病患者13名(男性8名女性5名、平均年齢±標準偏差:40歳±12歳、17項目ハミルトンうつ病評価尺度:平均21±3.7および年齢と性別を合わせた健常対照者13名(男性8名女性5名、年齢41±12歳)を対象に、NETに選択的な放射性プローブ(S,S)- [18F]FMeNER-D2を用いてpositron emission tomography (PET)検査を施行した。各個人の構造MRI画像と合わせて高精度の解剖学的標準化を行った。関心領域は視床と青班核に設定し、視床はOxfordのアトラスを用いて下位領域を分類し、青班核は用手的に設定した。尾状核を参照領域としたNET結合能を算出した。2群間の比較には対応のないt検定を行い、視床の下位分類に関しては多重比較の補正を行った。その結果、うつ病患者群は健常者と比較して視床においてNETの結合能が上昇していた(うつ病群0.36±0.10、健常群0.26±0.10)。視床の下位分類の中では前頭前野に投射する部位でのみ群間差がみられた(うつ病群0.46±0.10、健常群0.34±0.11)。一方、青班核の結合能はうつ病群と健常群の間に有意な差はみられなかった(うつ病群0.36±0.12、健常群0.30±0.18)。また、うつ病患者における症状の重症度と視床および下位分類および青班核の結合能の間には有意な相関(ピアソンの相関係数)はみられなかった。以上より、うつ病では視床のNETの神経伝達に機能障害がみられ、病態生理と関連している可能性が示唆された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int J Neuropsychopharmacol
巻: 17 ページ: 553-560
10.1017/S1461145713001521