研究課題/領域番号 |
24591693
|
研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
中山 敦雄 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 部長 (50227964)
|
研究分担者 |
深田 斉秀 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 研究員 (80414019)
|
キーワード | 発達障害 / iPS細胞 / 歯髄幹細胞 / 神経細胞 / 自閉症スペクトラム障害 |
研究概要 |
本年度は引き続き自閉症者と定型発達者からの歯髄細胞採取と歯髄幹細胞の樹立を進め、前年度分と併せ自閉症者7例から11系統、定型発達者17例から20系統の歯髄幹細胞株を樹立し、凍結保存ストックが作製された。さらに今後の実験結果の比較評価のために、原因が判っている単一遺伝子異常による脳発達障害の症例としてCornelia de Lange症候群の1患児からも歯髄幹細胞の4系統を樹立した。 樹立した歯髄幹細胞からのiPS細胞作製ではレンチウイルスを用いた遺伝子導入により塊状増殖コロニーの出現が見られ、iPS細胞のマーカーであるSSEA4発現までが確認された。これらの細胞はパッセージを繰り返すと大型化し接着性が増して幹細胞としての特徴を失うものが出現してくるため、現在は未分化状態と増殖能を維持した均質なクローンを得るために樹立済みの歯髄幹細胞由来iPS細胞を岐阜大学より供与を受け比較検討しながらの試行を開始した。 一方、歯髄幹細胞からの神経細胞分化誘導では、細胞突起を伸ばした神経細胞様形態への変化と、これに伴うβIIIチュブリン等の細胞骨格系蛋白の発現を上昇させることが出来た。しかし分化神経細胞の機能を再現するためにneuroligin family等シナプス関連分子の発現誘導を検討したところqPCRれべるでの転写増加が確認できるものの、十分量の蛋白発現には至っていなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞作製のための歯髄幹細胞は概ね順調に樹立が進んでいる。これは共同研究として当初計画より多くの施設から歯髄の提供を受ける体制が構築出来たためである。歯髄幹細胞の樹立も実験手技が熟練してきたため、効率よく樹立出来るようになっている。 一方iPS細胞の作製に関しては、リプログラミング遺伝子の導入を他施設のプロトコールに従って行うと細胞死に陥る割合が高く、これがiPS細胞を未分化状態で安定的に維持することが出来ない原因と考えている。このため遺伝子導入の条件検討に時間を費やしており計画が停滞している。当初計画では平成25年度にはiPS細胞からの神経細胞分化誘導を開始する予定としていたが、ここまでには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
歯髄幹細胞からのiPS細胞作製に関しては、岐阜大学医学部再生分子統御学講座から既に樹立済みの歯髄幹細胞由来iPS細胞の供与を受けており、これをコントロールとして利用しながらiPS細胞作製の条件検討を進めていく。26年度中にiPS細胞作製を安定的に行うことが出来るようにして、速やかに神経細胞への分化誘導実験を行う。 一方、単一原因遺伝子の変異により引き起こされる Cornelia de Lange症候群(CdLS)では自閉症に比べより均質な神経細胞表現型が期待できるため、この症例の歯髄幹細胞蓄積とiPS細胞作製も平行して進める。既に26年度において新たに1例から歯髄提供を受ける見込みがある。定型発達者由来やCdLS由来iPSをそれぞれ正常でのコントロール、神経発達障害でのコントロールとして使用することで、自閉症者由来分化神経細胞の解析を効率よく進められるように計画する。 また、引き続き定型発達者と自閉症者からの歯髄幹細胞作製を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験進行状況に記載したとおりiPS細胞樹立がやや遅れているために、当該年度に予定していたiPS細胞をヌードマウスに接種してのテラトーマ作製実験は行われなかった。保存の可能な試薬類と異なり、マウスは事前に購入しておくことは出来ないため、これに充てる費用を次年度に繰り越さざるを得なかった。 当該年度に予定していたテラトーマ作製実験を実施するためにヌードマウス購入と飼育に使用する計画である。
|