研究課題/領域番号 |
24591693
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
中山 敦雄 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 部長 (50227964)
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研究分担者 |
深田 斉秀 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 研究員 (80414019)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 発達障害 / iPS細胞 / 歯髄幹細胞 / 神経細胞分化 |
研究実績の概要 |
平成26年度末の時点で系統樹立した歯髄細胞は、健常発達者19名から23系統、自閉症者10名から14系統に達した。今年度はこれらからのiPS細胞作製を進め、自閉症者3名から6系統の初期化細胞コロニーを得るに至った。これらの初期化コロニーにおいてOct4、Sox2、Nanog、SSEA-4、TRA1-81といった初期化細胞マーカーの発現を確認した。さらに多能性確認のために免疫不全マウスへの接種実験を行ったが、テラトーマ形成の確認は次年度への持ち越しとなった。なお健常発達者由来歯髄細胞クローンは同様に初期化を施しコントロールとして使用する予定であったが、代わりに京都大学CiRAから購入した解析済みのiPS細胞をコントロールとして使用したため、初期化コロニーの樹立には至っていない。 平行して自閉症者由来初期化細胞から神経細胞への分化誘導実験を進め、栄養因子添加と長期培養により長い細胞突起を有する神経細胞様の形態を獲得することを確認した。機能的な解析に関してはこれも次年度への持ち越しとなっている。 さらに自閉症は遺伝学的多様性もあり、歯髄細胞や作製したiPS細胞の全ゲノムまたは全エクソーム解析が必要になることが想定されるため、対象を広げて遺伝学的複雑性が低く初期化によるゲノム変化の除外をより簡便に済ませられることが期待できる単一遺伝子疾患からの歯髄細胞採取も進めた。その結果平成26年度はCornelia de Lange症候群患児2名から5系統の歯髄細胞を樹した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞作製技術の確立が当初の計画より遅れたため、これに伴って樹立されたiPS細胞の解析に遅れをきたした。また初期化によるゲノム変異が起きていないことを確認するための全ゲノム解析は当初の研究計画で予算計上しておらず、これを実施していない。しかし厳密にiPS細胞樹立を言うためには必須と考えられ、「iPS細胞作製完了」が遅れる要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き自閉症者の歯髄細胞収集を進めると共に、研究実績の概要に記載したように対象疾患の範囲を拡大して神経系の発達障害を引き起こす単一遺伝子疾患の患児からも歯髄細胞収集を進め、iPS細胞を作製することとした。既にこの変更は施設の倫理審査承認を得ている。元々本研究課題は自閉症の病態解析に主眼を置いているが、自閉症の遺伝学的複雑性から短期的には成果を得難い可能性も想定し、当面は研究リソース整備としての自閉症者由来歯髄細胞とこれに由来するiPS細胞の収集、蓄積自体も重視して来た。一方で、患者iPS細胞由来の神経細胞がこれまで困難だった神経系疾患の、特に細胞レベルでの病態解明に広く有用であることを検証するため、分化誘導神経細胞の変化と遺伝学的異常の関連解明がより容易と考えられる疾患を研究対象に加え、成果をあげることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は研究計画にやや遅れが生じ、iPS細胞の多分化能確認のための免疫不全マウスへの接種実験にかかる経費が予定より少なかった。また学会発表のための旅費も当初予算より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初研究計画では最終年度は実験のための予算は少なく計上したが、26年度に完了できなかった実験を27年度に実施するために使用する。また遅れを取り戻した成果を種々の関連学会で発表するために使用する。
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