研究課題/領域番号 |
24591697
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水上 勝義 筑波大学, 体育系, 教授 (20229686)
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キーワード | アルツハイマー病 / アセチルコリン伝達系 / ブチリルコリンエステラーゼ |
研究概要 |
本年度は、アルツハイマー病(AD)脳の神経細胞変性に関わる機序として最近注目されているアセチルコリン伝達系に関する検討を行った。アルツハイマー病患者よび年齢を一致させた非アルツハイマー病高齢者の剖検脳海馬をホルムアルデヒドで固定し、その後薄切した切片をもちいた。今回はアセチルコリン伝達系を構成する要素のうち、シナプス間隙のアセチルコリンの減少に関連するブチリルコリンエステラーゼについて、特異抗体を用いた免疫化学的検討を行った。 その結果、ブチリルコリンエステラ-ゼ染色は、ADを発症していない高齢者の海馬のニューロピルに軽度認められた。神経細胞体はニューロピルより濃く染色された。AD海馬における染色性も非AD高齢者の染色性と類似していたが、ブチリルコリンエステラーゼ陽性の神経細胞の数は、進行とともに減少した。しかしニューロピルの染色性は高度ADでむしろ増強した。これはグリアに存在するブチリルコリンエステラーゼが染色されている結果と考えられる。またいくつかの老人斑も陽性に染色された。 今回の結果は、ADの進行に関わらずブチリルコリンエステラーゼは海馬において著明に変化しないか、多少増加する可能性を示している。 さらに、グルタミン酸受容体のサブユニットであるGluR2に対する特異抗体を用いて、非認知症高齢者、AD、レビ-小体型認知症の海馬の免疫組織化学的検討を行った。現在各疾患における染色性の違いについて詳細な検討を行い、論文を作成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度はアルツハイマー病(AD)海馬の神経細胞におけるHomer蛋白に関する免疫組織化学的検討を実施する予定であった。しかしながら用いた切片がホルマリン固定されたパラフィン包埋切片のせいもあり、現在までHomer蛋白の免疫組織化学は成功していない。希釈倍率をはじめとする染色の至適条件が徐々に判明しつつあるため、早期に染色が成功すると考えている。この点においては計画の達成度は遅れているといわざるを得ない。しかし、その間にグルタミン酸伝達系と同様に、ADの神経細胞変性に大きく関連すると考えられているアセチルコリン伝達系のブチリルコリンエステラーゼの免疫組織化学に成功した。これまでブチリルコリンエステラーゼに関しては、組織化学の結果は報告されているが、より特異性の高い免疫組織化学の結果の報告はなく、今回の結果が世界で初めてとなる。すでに論文を作成し、投稿準備を進めているところである。なお昨年度末に免疫組織化学に成功したグルタミン酸受容体のサブユニットGluR2については、非認知症高齢者、AD,DLBの海馬における変化についての詳細な検討を加え、論文を作成中である。 以上より全体的な達成度としては「おおむね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在作成中の論文を早急に完成し、投稿することが喫緊の課題である。またHomer蛋白に対する免疫染色を成功させることが重要である。これまでHomer蛋白の変化についてAD剖検脳を用いた検討は報告されていないため。至適条件の検討に時間を使ってしまったが、まもなく成功すると考えている。可能であれば、Homer蛋白の染色結果の評価を行い、論文作成まで至りたい。
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