研究課題/領域番号 |
24591698
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
北村 秀明 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00361923)
|
研究分担者 |
飯島 淳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00377186)
遠藤 太郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70515759)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 自閉症 / アスペルガー障害 / 共感 / 前頭皮質 / 近赤外光スペクトロスコピー |
研究概要 |
本研究の目的は、人と人の感情の授受、対象や状況に対する感情の共有、すなわち共感機能を、それが発揮されている現実の対人世界で測定・評価する技術を開発し、アスペルガー症候群やその傾向の強い個人に適用することで、その病態や共感の個人差の解明に迫ることである。そのために、携帯型・無線通信内臓の近赤外分光装置を2個体に同時に装着し、被験者に複数の対人状況と共感課題を課し、生態学的に自然な環境下で共感授受と相互作用に関連する脳活動の動態解析を行う。今年度は、まずその基礎的技術の確立と非臨床群における実験を行った。上記の要件を満たすNIRS装置WOT(日立製作所)を新たに購入し、既存の装置と合わせて2台の装置を無線LAN接続して、東日本大震災の被災状況やその時の感情をお互いに語り合う課題を課した場合の前頭皮質反応を測定した。無線によるデータ取得は周辺環境からの電磁波干渉等もあり一時不安定であったが、実験環境を整備することで安定した測定が可能となった。また自由度の高い会話では被験者の頭部動揺が大きかったが、うなずきやジェスチャーに対する教示を十分行うことで、自然な会話としてある程度それを許容しつつ、アーチファクトの混入を抑制することに成功した。同時に両者に心拍計を装着し、心拍変動解析による交感・副交感神経活動のバランスを測定することに成功した。結果、インタビューする側とされる側を交互に行うといった役割を教示したにも関わらず、被験者の個性により会話の主導権に関する優位性が顕著であった。個性は5因子理論に基づく性格特性、自閉特性、社交不安、最近の抑うつと不安の観点で前頭皮質反応との関係を分析したが、神経症傾向や自閉特性が会話量や前頭皮質反応の大きさと相関する可能性が示唆された。現在、詳細を解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非臨床群での基礎的検討は十分できた。 一方、現在使用している汎用NIRS装置との共通解析プラットフォームPOTATo(日立製作所)とは別に、工学研究者と共同してdual f-NIRSに最適化した解析方法を、fMRIにおける先行研究(Saito et al 2010)等を参考にして今年度に開発する予定であったが、これを開始していない反省点が残った。
|
今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、工学研究者と共同してdual f-NIRSに最適化した解析方法の開発に着手する。また臨床群(アスペルガー症候群)における実験を開始する。その際に、以下の共感機能の測定を組み入れる。 多次元評価尺度:視点取得、空想、個人的苦悩、共感的配慮の4つの下位概念から構成される。他者の存在の認知、他者の立場に立つ能力、他者の考え方や感情を知る能力など。情動的共感性尺度:感情的暖かさ、感情的冷淡さ、感情的被影響性の3因子からなる。多次元評価尺度よりも、共感の情動的側面の評価に重点を置いている。共感経験尺度:2つの下位概念から構成され、過去の共有経験と共有不全経験を聞く。
|
次年度の研究費の使用計画 |
NIRS装置の購入と、そのアップグレードをすでに終えたので、高額備品の購入はない。研究費は実験被験者への謝金に主に使用する予定である。
|